開成番長の勉強術 第1章 思考改革術〜今までの考え方を見直してみる〜

この章では、学力向上の鍵となる「効率性」の重要性と、それを支える思考の転換について論じられている。才能よりも方法論、結果よりもプロセス、そして何より「自分のために学ぶ」という姿勢の確立が、子どもたちの成長において決定的な意味を持つことが示される。保護者にとっては、成績の背景にある学習の質と子どもの心理状態に目を向けるきっかけとなる内容だ。
この章の目次
効率性が成績を左右する
東大合格に必要なのは天才的な頭脳ではなく、効率的に学習する能力である——本書ではまずこの前提が強調される。毎年3000人もの合格者が生まれる事実は、特別な才能よりも「器用に物事をこなす力」の重要性を物語っている。
才能よりも方法論
イチローやタイガー・ウッズのような天才が頂点を極めるには、確かに生まれ持った大きなキャパシティと血の滲むような努力が必要だ。しかし大学入試という舞台では、全国1番になる必要はない。求められるのは、限られた時間の中でどれだけ効率よく知識を吸収し、確実に点数に結びつけられるかという実務的な能力である。
非効率な方法は学習意欲を削ぐ
パンクした自転車で走り続けるのは愚策だ。一時的に遅れても、修理してから走ったほうが結果的に遠くまで行ける。学習法も同じで、早い段階で非効率な方法を修正しなければ、時間をかけても成果が現れず、やがて学習意欲そのものを失ってしまう。時間に見合った効果が得られないストレスは、子どもたちを「頑張っているのに報われない」という絶望的な状態へと追い込む。
自分の勉強法を見直す習慣
成果が出ないと感じたら、まず立ち止まって自分のやり方を問い直す必要がある。慣れない方法に最初は戸惑っても、わずかな意識改革が飛躍的な成長をもたらす可能性がある。効率術を身につけることは、学習効果を最大化するだけでなく、子ども自身の自信と意欲を守ることにもつながる。
効率的に学べば合法的にサボれる
「サボる」という言葉に日本人は強い拒否反応を示すが、本書では逆に「サボりの時間」を肯定的に捉え直す。人間は本来ラクをしたい生き物であり、その欲求を否定するのではなく、効率化によって正当に自由時間を獲得する道筋が示される。
成果主義の視点
仕事において大切なのは長時間の勤務ではなく、いかに成果を出すかである。9時から17時で終わろうと、20時までかかろうと、極端に言えば15時に終わって昼寝をしていようと、同じ成果なら評価は等しくあるべきだ。むしろ短時間で終えたほうが、コストの面でも優れている。この「成果主義」の考え方は、勉強にもそのまま当てはまる。
効率化で生み出す自由時間
テキパキと課題をこなして自分の時間を作り出す——これは「悪いサボり」ではなく、努力の正当な報酬である。だらだらと辛い時間を過ごすのではなく、やるときは集中して、あとは全力で自分の好きなことをする。このメリハリのある生き方こそが、人生を楽しみ充実させるコツだと本書は説く。
保護者が意識すべきこと
子どもが勉強時間を短縮して遊んでいると、つい不安になる保護者も多い。しかし重要なのは時間の長さではなく、学習の質と成果である。効率よく学ぶ習慣が身につけば、子どもは自然と自由時間を楽しむ余裕を持つようになり、それが更なる意欲を生む好循環となる。
人と違うことを恐れるな
日本の教育文化は、しばしば「周りと同じ」であることを美徳とする。しかし本書では、自分らしさ=アイデンティティの確立こそが、記憶に残る充実した人生への第一歩だと主張される。
没個性を生む教育システム
日本では「5+7=?」という形で足し算を習うが、イギリスでは「□+□=12」という形で教える。前者は唯一の正解を求め、後者は回答の多様性を尊重する。こうした違いが、日本人の「周りと違うことへの恐怖」を助長していると指摘される。アイデンティティという言葉の和訳が「自己同一性」としっくりこないのも、日本に個性の概念が根付いていない証左だ。
目立つことの価値
著者自身、小学生の頃から目立ちたがり屋で、中高時代には数々の「伝説」を残した。卒業10周年の同窓会では、自分に関する出来事がベスト10のうち3つにランクインしたという。人々の記憶に残る人生のほうが楽しいのではないか——その問いかけは、没個性的な生き方への警鐘でもある。
親ができるサポート
子どもが「人と違うこと」をしようとするとき、保護者はつい心配して止めたくなる。しかし、安全に配慮しつつも個性を尊重し、挑戦を見守る姿勢が、子どもの自己肯定感とアイデンティティの形成に不可欠だ。周囲と比較するのではなく、その子なりの「らしさ」を認めることが求められる。
物事は前向きに考えろ
「自分はツイている」と思い込むこと——これが成功への扉を開く鍵だと本書は説く。ラッキーであるかどうかは客観的な指標ではなく、自分の心が決めるものだからだ。
プラス思考の力
著者は浪人も留年も経験したが、そのおかげで好きな人と付き合えたり、深い人間関係を築けたりしたと振り返る。株で大きな損失を出したときも「今のうちに痛い目を見られて良かった」と前向きに捉えた。すべては考え方次第で意味が変わる。プラス思考で物事を捉えれば、どんな出来事もラッキーだと感じられる。
ポジティブオーラの連鎖
自分がポジティブでいれば、ネガティブな人間は寄ってこない。前向きな気持ちでいるときは周囲も前向きで、物事はうまく運ぶ。逆に悪いほうばかり考えていると、ネガティブな人が集まり悪循環を生む。著者が本の出版に至ったのも、ポジティブな人脈から広がった「ラッキーの輪」のおかげだった。
メンタルブロックを解除する
失敗経験が「できない」「無理」という思い込みを生み、行動を阻害する——これをメンタルブロックという。インドのゾウが細い棒に繋がれても逃げないのは、子どもの頃に「逃げられない」と刷り込まれたからだ。人間も同様に、取り掛かる前から諦めてしまうことが多い。「なせば成る」の精神で、積極的にチャレンジする姿勢を持つことが大切だ。
仕事をするようになってはじめて勉強の大切さに気づく
著者は自らを「サボりたがり屋で勉強嫌い」と称し、学生時代は勉強時間を圧縮して遊びに使うことばかり考えていた。しかし社会に出て自らビジネスを始めたとき、勉強の本質的な価値に気づくことになる。
判断のベースは知識と経験
仕事とは選択と決断の連続であり、特に経営者の判断は業績に直結する。その判断のベースとなるのは、それまでの人生で培ってきた知識と経験だ。著者は経済学部出身でありながら、経営に必要な知識が何ひとつ身についていない自分に愕然とした。その場をやり過ごすためだけの勉強では、実社会で何の役にも立たなかったのだ。
勉強は自分のためにするもの
学生時代、勉強の意味が分からず冷めた目で見ていた著者。しかし知識の量が実益に直結することを知り、必死で勉強に励んだ。興味を持てば没頭できる性格ゆえ、半日ぶっ続けの勉強も苦にならなかった。その結果、ビジネスは徐々に軌道に乗り始めた。勉強は誰のためでもなく、自分のためにするものだという原則を、身をもって理解したのである。
勉強は最高の自己投資
充実した人生には余裕あるお金が必要であり、そのために我々は収入を増やさなければならない。権利収入(不労所得)を得るには投資が必要だが、最も効率の良い投資先は「自分自身」だ。千円の本から得られる知識が、何億倍もの価値を生むことがある。学費や時間を惜しまず勉強に投資することが、長期的に最も利回りの良い選択となる。勉強して学んだことは、いずれ必ずお金となって返ってくる。
まとめ
この章では、学力向上の本質が「効率性」と「思考の転換」にあることが明らかにされた。才能ではなく方法論、時間ではなく成果、没個性ではなくアイデンティティ、ネガティブではなくポジティブ——そして何より、勉強は自分の未来への投資であるという認識の転換が、子どもたちの成長を決定づける。保護者には、目先の成績や勉強時間に一喜一憂するのではなく、子どもが効率的に学び、前向きに挑戦し、自分らしさを発揮できる環境を整える視点が求められる。