著書紹介記事

開成番長の勉強術 第2章 効率向上術〜万人に平等なもの、それは時間〜

開成番長の勉強術

この章では、誰にでも平等に与えられた24時間をいかに有効活用するかという実践的な方法論が展開される。可視化による自己分析、手帳やメモを活用した計画術、集中力を高める環境づくり、そして「ステイライン」という独自の概念による学習効率の最適化まで、時間を支配するための具体的な技術が余すところなく紹介される。保護者にとっては、子どもの学習時間の「質」を見直すきっかけとなる内容だ。

この章の目次

自分を客観視することで反省点をあぶりだす

「毎日をもっと充実させたい」と誰もが思いながらも、現状に漠然と満足してしまい、改善の余地を見逃してしまうことは多い。感覚だけに頼る姿勢ほど危険なものはない。

可視化する作業の重要性

より充実した日々を目指すなら、まず自分の生活を紙に書き出して目で見える形にすることだ。一週間の生活をタイムテーブルとともに日記形式で記録してみると、たいていはどこかに謎の「ダラダラ時間」があるもの。その時間を圧縮し、目的を持った行動に切り替えるだけで、充実度は大きく変わる。この可視化作業は、自らの行動を客観的に振り返るにあたって極めて効果的だ。

時間対効果を意識する

休憩そのものが悪いわけではない。問題なのは、本来かかるはずのない時間をダラダラと費やしている状態だ。仕事では「費用対効果」が重視されるが、「時間対効果」を意識する人は意外に少ない。お金と違って時間の無駄は目に見えにくいため、100円玉を落としたことには気づいても10分を落としたことには気づけない。一週間で10分を6回落とせば1時間の無駄になり、時給900円で換算すれば100円玉×6回より1.5倍も痛い。Time is Money——時は金なりである。

紙に書くことで軌道修正する

紙に書くことで無駄に気づき、いち早く軌道修正の方法を考えて実行することが効率化への第一歩となる。感覚に頼るのは危険であり、可視化してきちんと反省することが不可欠だ。

リマインダ、一歩進めてプランナー

どんな人にも平等に与えられているもの、それは時間だ。限られた時間の使い方次第で、貧しい境遇から成功への道が開けることもあれば、裕福な家庭に育っても財産を失うこともある。時間を支配するための最も身近なツールが手帳である。

手帳は予定の「企画」のためにある

多くの人は手帳をリマインダ(備忘録)として使っているが、それだけでは不十分だ。手帳の役割を一歩進め、有機的に自分の行動を計画立てるためのツールとして活用することで、その存在意義は大きく変化する。単なる無機的なメモではなく、プランナー(計画帳)としての役割を持たせることが大切だ。

具体的な時間の使い方を意識する

予定が漠然としていたり中途半端な空き時間があったりすると、人はだらけがちになる。しかし手帳で行動予定を可視化することにより、無駄な時間に制約をかけることができる。予定を記入する際は、なるべく具体的に、そして予定間の時間で何をするのかを考えながら、無駄な時間を作らないよう意識することがコツだ。

クッションタイムを忘れずに

隙間なく計画を詰め込むことが必ずしも良いとは言えない。予定がずれ込んだときの挽回がきかなくなるからだ。一日に2回程、30分くらいの調整時間「クッションタイム」を設けられるとなお良い。これはダラダラしていい時間ではなく、膨らんだ時間のはみ出しを吸収するための緩衝材となる時間だ。目的を持って24時間を計画することで生活はより充実する。

簡単予定確認「アサメモ!」

細かい計画を先まで立てるのは大変で面倒だという人のために、より手軽な方法が紹介される。それが「アサメモ!」だ。

86400秒の使い道を決める300秒

毎朝起きたとき、その日の予定・やるべきことをノートにズラーっと書き出す。時間は5分と制限し、ガーっと書き出す。まずはざっくりとしたものを書き出し、その後必要に応じて詳細を書き込む。さらに目標も書き込むとなお良い。この作業をやるだけで、一日の充実度はずいぶん違ってくる。必要な時間は毎朝5分、ハミガキと同じく習慣にしてしまえばなんのことはない。

やるべきことに優先順位をつける

一日の時間は限られているため、全部をやるのが明らかに不可能な計画もある。そんなときは優先順位をつけなくてはならない。この判断を見誤ると、やるべきことを時間内に終えられなかったり、あまり大事ではないことに時間をかけてしまったりする。予定は朝に決まるだけでなく途中で入ってくることもあるため、その瞬間ごとにも優先順位をつける必要がある。毎朝の訓練により、その時々の状況を正しく判断するための力を養うのだ。

一日の始まりに計画を確認する意義

「アサメモ!」には様々なメリットがある。自分の予定を可視化できること、思考が整理され気が引き締まること、そして自分の能力を冷静に見極められるようになることだ。最初のうちは張り切りすぎて計画が不完全に終わることも多いが、続けるうちに自分が一定時間の中でできる作業の量がだんだんと掴めてくる。毎朝その日の計画を確認し、一日の終わりに実際にできたことと比べることで、やがて優先順位づけが上手くなり、「無理のない」しかし「無駄のない」計画を立てられるようになる。

馬に学ぶ集中術

きちんと計画を立てても、いざ取り掛かる段になって「いまいち気が入らない」と悩むことはある。そんなときの対処法として、競馬のブリンカーにヒントを得た方法が紹介される。

視界の遮断が競走馬をレースに集中させる

ブリンカーとは競走馬の目の横につける器具で、馬の後方の視界を遮断して前方に集中させるための道具だ。馬は視野が300度以上もあるため、中には周りが気になってレースに集中できない馬もいる。この発想を人間の勉強にも応用するのが「ブリンカー作戦」だ。

ブリンカー作戦で誘惑を周りから排除する

図書館に行くのは良い例だが、家で勉強する場合にはテレビやネットを禁止するのも有効な手段だ。これらの破壊力は恐ろしく、気がつけばあっという間に1時間や2時間を奪ってしまう。著者は大学入試の直前に1ヶ月ほど携帯電話を封印したことがあり、その結果、一気の追い込みを決めて逆転合格につながった。自分の誘惑になり得るものは周りから排除——当たり前に思えるかもしれないが、実行できている人はなかなかいない。

モチベーションアップに効果絶大! ニンジン作戦

「馬の目の前にニンジンをぶら下げると馬はそれを追ってどこまでも走り続ける」という話と同じように、人間の目の前にもニンジンをぶら下げることは、モチベーションアップに大変有効だ。目標得点を達成したら欲しかった服を買えるとか、参考書をここまで仕上げたら晩酌はビール、ダメなら麦茶とか、どんなものでもいい。達成すべき目標とそれに対する褒美を設定することは、エンジン全開で頑張るための原動力になる。著者が浪人時代の腐った生活から抜け出せたのは「東大合格と引き換えに彼女とつきあえる!」という目標がぶら下がったことがきっかけだった。

テンパった時に効果的なリセット

集中して物事に打ち込みやすい環境に自分を置いても、「やるべきことは分かっているのにどうしても集中できない」という状態に陥ることはある。そんなときの対処法が「完全休養日」だ。

いったん充電したほうがトータルでは効率的

時間を効率よく使うための方法は、自分をそれなりに抑えつけるやり方なので、続けるうちに精神的なストレスを感じることもある。そんなときには、いっそ自分を縛る全てのことを忘れ、好きなように過ごす日を設けることが重要だ。その日一日は勉強のことを考えるのを一切禁止し、音楽を聴くもよし、運動するもよし、ドライブに行くもよし、とにかく自由気ままに過ごす。精神的に疲れていて一日50しか進まない状態で一週間勉強するよりも、一日思いっきり休んで気力を回復させ、100進む状態で残りの6日間勉強したほうがトータルで見た場合には遥かに効率的だ。

休みすぎには要注意、期限を決めてリセットする

しかしこの考え方には一つ盲点がある。人間は弱い生き物で、何も制約がなければ楽なほうへ流れていく。完全休養日は好きなことだけをしているのでとても楽な一日であり、うっかりすると「もうこのままずーっとやめちゃえば?」というナマケモノ大王の悪のささやきに流され、勉強への復帰ができなくなりかねない。そのため、このリセットは確固たる意思をもって「一日」という期限つきでやるべきだ。二日以上になってしまうと危険度が増すだけでいいことはない。

努力は実を結「ばせろ!」

計画を立て、集中力を高めても、学習の「やり方」を間違えれば努力は水の泡となる。ここでは「ヤマを張る」行為と「中途半端に終える」行為の危険性が指摘される。

ヤマを張るのは満点を自ら下げる行為

範囲が20ページの試験で、6ページ分だけやらずに試験を受けに行くことは、自らテストの満点を下げるようなものだ。やり残した部分が出なければセーフだが、出る可能性は十分あり、期待値で考えればそのヤマ張りはテストの満点を70点にしているのと同じことになる。著者が中学時代に成績優秀者として表彰されていた頃は、一夜漬けながらも100点目指して勉強し、全ての単語を覚えきるまで徹底的にその範囲を繰り返し学習した。せっかく夜中じゅう起きて勉強したからには、中途半端に残してしまうのはとても気持ち悪く、完璧にしないとどうしても気がすまなかったのだ。

適当に流してしまうと結局何も残らない

ヤマを張るよりも最悪な行為がある。それは全体を中途半端な理解度で流してしまうことだ。中途半端な理解度のものは、自分の頭の中で置き場所を整理できていないもののことで、これまでに蓄えてきた知識と有機的に結びつけることができず、意味が明らかになっていない。人間の頭は「よく分からないもの=興味がないもの」と判断し、その情報を捨ててしまう。なんとなくの理解のままで教科書を見ても、テストになると全く思い出せないという経験は誰にでもあるはずだ。

ステイラインの概念

内容をきちんと噛み砕いて、ある程度のラインまで理解することでその後も記憶に残る。そのラインに達しないような取り組み方では、せっかく学習した内容でも簡単に記憶から抜けてしまう。著者の経験に照らし合わせると、大体「8割程度」の理解をすれば、頭の中にしっかりと意味のあるものとして残ってくれると感じる。8割程度の理解とは、そのもの自体の意味が分かり、前後の文脈との関連も理解できている状態だ。この8割の理解度のところにある記憶の定着ラインのことを、著者は「ステイライン」と呼んでいる。

8+8V10の意識

完璧主義的な性格の著者が、パレートの法則との出会いによって編み出した、より効率的な勉強スタイルが「ステイライン勉強法」だ。

パレートの法則と勉強の関係

パレートの法則とは、全体の数値の大部分は全体を構成するうちの一部の要素が生み出しているというもので、「80対20の法則」「ニッパチの法則」などとも呼ばれる。著者はこれをヒントに「勉強の成果の8割は、費やした時間全体のうちの2割の時間で生み出している」という仮説を立てた。この考え方に経験則に基づく数値の修正とステイラインの概念を加えることで、より効率的な勉強スタイルを作り上げたのだ。

ある程度まで仕上げたら次に移ることが大切

80点の生徒を100点にもっていくには、50点の生徒を80点まで押し上げるよりも遥かに時間を要する。つまり8割の理解度までは比較的容易にたどり着けるが、そこから10割の理解度にたどり着くには苦労する。勉強に関しては、一般的なパレート曲線「8対2」ではなく「8対5」として考え、これを「勉強パレート曲線」と呼ぶ。7割の理解度までは3の時間で、8割の理解度までは5の時間で、10割の理解度までは10の時間でいくと仮定する。

ステイライン勉強法の威力

同じ10の時間が与えられたとして、各教科7割の理解度で終える場合(ステイラインに乗らず半減)、各教科8割の理解度で終える場合(ステイライン確保)、各教科10割の理解度で終える場合(完璧だが1教科のみ)を比較すると、最も効率的なのは8割の理解度で複数教科をこなす方法だ。これが「ステイライン勉強法」である。せっかく勉強しても、ステイラインに乗せられないとその勉強が無駄になる。逆にステイラインに乗ったら、そこで素早く次の教科に移ることが得策だ。8割から100点にもっていくのには時間がかかるため、その時間で新たな教科を0点から80点にもっていくほうが効率的なのである。

実生活への応用

ステイラインの考え方は、勉強以外でも様々な場面に応用できる。仕事であれば、ある程度プロジェクトを進めてそれなりの形になってきたのに詰めを怠り、軌道に乗せられずにポシャってしまうパターン。人間関係であれば、せっかく仲良くなりかけていたのにメールの返信をサボって疎遠になるパターン。あと一歩のところまできているのにやめてしまうせいで、それまでの成果が失われてしまうのは最悪だ。デキるビジネスマンは仕事が速いが、それはみんな、ステイラインに乗せたところで次から次へと仕事を処理していくからだ。

効率は時間を支配する

この章で紹介された方法論の集大成として、効率が時間を生み出し、時間が人生の余裕を生み出すという循環の重要性が語られる。

開成生がガリ勉でなくとも成績をとれる理由

著者の友人たち、開成の人間、東大の人間は決してガリ勉ではなかった。弾けるときには本当に馬鹿で、世間が思っている以上に人間味があって面白い連中だ。そして彼らに共通して言えることがある。彼らは皆、要領がいいのだ。要領がいい人というのは、効率術を使いこなす達人ということだと著者は考えている。しっかり効率化を考えて行動しているからテキパキと要領がいく、すると時間に余裕が生まれる。彼らは自分たちのするべきことをきちんとこなしながら、そのかたわらで友人つきあいを大切にし、馬鹿話に花を咲かせているのだ。効率は時間を生み出すのである。

時間を支配することが余裕ある人生への第一歩

余裕のない日々を過ごしている人は、あくせくとした毎日を送り、人当たりも粗末で、決して気持ちのよいものではない。そして決まってお金がない、時間がないと騒ぎ立てる。しかし実はこの人たちは時間を生み出すための努力を怠っている可能性が高い。こういう人たちは時間に支配されている人々だ。経済的に成功していて人間的にも優れた魅力をもっている人には余裕があり、時間に余裕があるから金銭的な余裕が生まれ、金銭的な余裕があるから時間的な余裕も生まれるという好循環に入っている。この循環に入るための第一歩は、時間だ。誰にでも平等に与えられているもの、それが時間である。時間を支配すること、これが余裕ある人生への第一歩なのだ。

まとめ

この章では、時間を支配するための実践的な技術が体系的に示された。可視化による自己分析、手帳や「アサメモ!」を使った計画術、ブリンカー作戦やニンジン作戦による集中力向上、完全休養日によるリセット、そして「ステイライン」という独自の概念による学習効率の最適化——これらはすべて、限られた24時間を最大限に活用するための方法論だ。保護者には、子どもの学習時間の長さではなく質に注目し、効率的な時間の使い方を身につけさせることの重要性が示される。時間に支配されるのではなく、時間を支配する——その意識の転換が、余裕ある人生への第一歩となる。

お気軽にお問い合わせください!

ボタンをタップすると発信できます

【 営業時間:月~土 14:00~22:00 】