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難関校に合格する人の勉強法はいつの時代も同じ 第四章 科目別「勉強の極意」

第四章では、算数・数学、理科、社会、英語、国語の各科目について、中学受験と高校受験の両方の視点から、具体的な勉強の極意が詳しく解説されている。各科目の特性を理解し、効率的な学習方法を実践することで、確実に得点力を向上させることができる。保護者が子どもの学習をサポートする際の具体的な指針となる内容だ。

この章の目次

勉強の極意――算数・数学

科目別の攻略法に関して、中学・高校受験を中心に書くことにする。まずは「数学」ならぬ中学受験の「算数」からだ。中学受験において算数は最重要科目といえる。特殊な一科目入試を除き算数は必ず試験科目に入っており、しかも配点が高く設定されていることが多いからである。さらに算数は、設問の数が他の科目よりも少ないため、一問あたりの配点が高くなる。それによって算数のでき次第で合否が左右されることになるのである。事実、過去のデータを見ても、受験者平均点と合格者平均点を比べたとき、その点数に一番開きがあるのがほとんどの学校において算数なのである。

中学受験――わかるところまで戻る勇気

受験の算数で求められるのは何なのか。それは計算力と論理力だ。与えられた条件を整理しながら正解にたどり着くという一連の作業を論理的に行えるか。またその過程でいかに素早く正確な計算ができるか。それらが問われている。つまり算数の攻略のカギは、いかにこの二つの力を備えるかということになる。そしてある一定レベルを超えたときに差がつくのは、特に論理力の部分だ。受験の算数では、豊かな発想力などは必要ない。9割以上の問題は、いくつかの解法パターンを身につけていれば、あとはそれを論理的に組み合わせるだけで十分対応可能なのである。論理的理解のともなった解法パターンを身につけることは正解を導くために不可欠であり、そのためには算数といえども記憶に近い勉強が必要となるのだ。

ただし解法パターンを身につけるときに注意しなければならないのは、ただ公式の暗記のように憶えるのではなく、その都度正解までの道すじを確認するようにして、論理的に考えながら繰り返し練習することである。そしてそのためには、基礎が固まっていることが重要になってくる。なぜなら、これがないと解法パターンを構成する要素そのものがそろわなくなるからだ。ここでいう基礎は、たいていの塾で小学五年生~六年生前半までに教わっているはずで、受験まで少なくとも半年以上を残した状態で、一通りの算数の解法は習ってしまうのだ。

帯を締めてかかるべきは、五年生から。「○○算」「△△算」という、いわゆる特殊算が大量に押し寄せ、新しい考え方をたくさん吸収しなくてはならない時期にさしかかる。このあたりで面食らい、そのまま「算数が苦手」となってしまう子どもは少なくないが、だからこそ踏ん張りどころなのである。ここで習う基礎的な解法をいい加減に放置した状態で、六年生の内容が理解できるはずもない。組み合わせる知識がない状態で、論理的に考えろといっても無理な話で、頭の中はますます混乱する。その結果「苦手」から「嫌い」という悪い流れに乗ってしまうわけである。

まだ幼い小学生にとっては「出来た!」という成功体験はとりわけ重要だ。だからウソの上塗りのようにわからないところをごまかしごまかし進めて砂上の楼閣を築くよりも、苦手な子は理解できなかったところまで戻ってやり直したほうがいい。「急がば回れ」というのは本当で、一見遠回りに見える行為でも、これをやることで「苦手」から一転して「得意」になることが現実に多い。「出来た!」という喜びが興味をかきたて、抜けていた基礎自体も再確認できるからだ。塾でもこんな例はいくらでもあるので、苦手であろうが嫌いであろうが、とにかくあきらめずにわかるところにまで戻って丁寧に勉強を続けることである。ちなみに、この基礎固めは六年生の夏までには終わらせておくのが理想だ。なぜならば秋以降は、徐々に志望校の過去問演習も盛り込んでいく必要があるからである。入試寸前まで基礎固めに追われてしまうと、得点するための練習が不十分に終わる可能性が高い。早め早めの対策が肝心といえる。

高校受験――文字式を利用した解法の定着が肝

高校受験では、とりわけ三教科・五教科の総合的なバランスが重要になる。なぜなら高校受験では、中学受験と違い、理社も含めて均等配点であるケースが多いからである。つまり、受験勉強をはじめる前に、数学は弱点教科だから受験者平均くらいはとっておきたいとか、得意教科だから満点近くをとるなど自分の中での位置づけを明確化しておきたい。これは以降の他教科についても同じことが言える。受験の合否はあくまで総合得点によって決まることを再認識してほしい。その上で過去問に取り組み、取りこぼしが無いかを毎回振り返る必要があるといえる。

数学の勉強の極意は、やはり大学受験同様、解法パターンを数多く憶えることにある。解法パターン自体が理解できないということはなくしておきたい。特に「算数」との大きな違いは、文字式を利用した解法が身についているかで、これが「中学数学」の肝といってもよい。この点が克服できるかどうかで、中学受験によって得た「算数」というアドバンテージは、2年生あたりで他の「数学」を着実に勉強してきた生徒に逆転されるという現象もよく見受けられる。

次に具体的な単元として、「計算」・「関数」・「図形」に大きく三分して見ていくと、早急に得意にすべきは「計算」と「関数」である。公立の入試においても、難関校入試においても、出題者の立場から考えて、この二単元は難しくしようとしても限界がある。特に「関数」については単独で難易度を上げることが難しいため、「図形」と関連付ける問題をよく見る。つまり純粋な「関数」の問題や「計算」は得点源になる上に、数学の総合得点のベースとなることは間違いない。「計算」には単純な一行計算から文章題も含まれるわけだが、それこそパターン別に演習することが効率的である。ここでは計算力が高校受験でも重要であるということを念押ししておく。

一方、「図形」は「発想力」を要求される問題が多い。しかしながら、ここでいう「発想力」は訓練で身に付く力ではあり、つまるところ、「どの」図形に注目して「何の」定理を利用するかを反復演習することでできるようになる。中学生が苦手とする「図形の証明」という単元があるが、これは論理力を確かめる最もよい試験であり、高校数学に一番通ずるところであると考えている。「中学数学」はできるのに「高校数学」ができないという生徒はこの「図形の証明」をないがしろにしていたのではないだろうか。ここは単なる受験勉強として捉えるのではなく、「高校数学」への入り口だと思って真剣に取り組んでもらいたい。

数学の話の最後に、特に難関校を受験する生徒には、有用な公式をたくさん覚えてほしい。「公式を暗記することに意味があるのか?」という疑問を持つ人も多いと思うが、答えはYesだ。問題によっては、公式を利用して解く場合と解かない場合とでは、大きな差が生じることがある。これはどこで効いてくるのかというと、解答時間であることは明白である。試験という限りある時間内で問題を解く上で、「すばやさ」というステータスは欠かせない。実は教科書に載っていない受験で使える公式やテクニックは数多く存在する。これらを吸収するために塾に通うことも、合格に近づく一つの方法だと思う。

勉強の極意――理科

中学受験――五感で憶えることと得意分野をつくること

中学受験の理科は、学校によってちがうが、配点は国語や算数の五割から八割程度に設定されることが多い。主要科目とはいえないが、受験は総合点の勝負であるから、他の科目の仕上がりも考慮しつつ、学習に取り組むことが重要だ。理科は算数のような計算力が求められる問題も含まれるが、そのパターンは限られている。よく算数とセットで「理数科目」というくくりがなされるが、大学受験の数学・物理ほどは連動していない。もちろん計算力は必要だが、算数的知識としては「割合・速さ」の基本、「比例反比例」、「グラフの読み取り」程度しか求められず、理数科目として大人が教え込もうとすると、算数が苦手な生徒に対して不必要に理科の苦手意識まで刷りこんでしまうことになりかねないから注意していただきたい。まずは少ない解法を解けるようになるまで繰り返し練習し、それを使いこなせるよう演習を積むのが学習の基本だ。

ただしこれら計算問題は、条件を複雑にして難問を作りやすいうえ、算数と同様、一問まちがえるとそのあとの問題を芋づる式に間違えていきやすいという厄介者でもある。理科といえど大問をまとめて落とすと点数的に相当痛いので、上位校を狙う生徒は得点できるはずの問題では極力失点しないように「取りきる力」をつけることと、難解な問題にもしっかり対応できるよう、入試レベルの問題演習も積んでおくことである。

そして侮れないのが知識を求められる問題の対策で、中堅校以下の入試ではこの部分で大きな差がつく。正直、これはもうひたすら憶えるしかない。とはいえ、ただやみくもにやっても次から次へと忘れていくし非効率的である。それは前章で述べたとおりで、「必要なことだけを効率的に」と常に心がけながら勉強することが肝心だ。

理科の勉強にあたって勧めたいコツが二つある。一つは五感を使いながら憶えるという方法だ。記憶には「イメージ」が重要であることは前章で書いたが、たとえば昆虫の名前や体の構造などは、一度実物を見ておくと憶えやすくなる。しかし都合よくトンボやカマキリがそのへんにいることはなかなかない。そういう場合は、図鑑やインターネットなどで写真を探して見ておくといいだろう。私が小学生のときはまだインターネットなどは普及していなく、この方法は手軽には使えなかった。今はせっかく便利なものがあるのだから、存分に活用したい。たとえば地球や太陽の動きだって、紙の上の解説を読むだけでなく、実際に見ることができれば、はるかに理解は進む。これもいまならパソコンを使えば、CG(コンピュータ・グラフィック)で目にすることができる。

小学生というのは、面白ければどんどん食いついてくる。親などまわりがそういう気持ちをうまく利用して楽しみながら勉強をさせてあげると、理科嫌いにはなりにくいどころか、むしろ興味を持って積極的に勉強するようになるだろう。

もう一つのコツとしては、「理科嫌い」な人に向けて心理的なことを挙げたい。中学受験の理科は範囲が広いので、「全部が嫌い」というふうにはなかなかならない。昆虫は嫌いでも花は好きとか、あるいは宇宙には興味があるなどである。不思議なもので、人間はある分野で結果が出ると、他の分野でも出せるにちがいないと思うのか、一生懸命やるようになる。この心理を利用して、まずは得意分野を一つつくり、そこでの成功体験をベースにモチベーションを上げつつ、他の分野も攻略していくといいだろう。

高校受験――教科書レベルの実験・観察問題をメインで

次に高校受験の理科であるが、一分野の中に化学・物理、二分野の中に生物・地学があり、中学の一年間にこの4つの単元を学習することになるので、中学の理科は12個の単元に綺麗に分かれている。しかも、この1つ1つの単元はリンクしている部分が少なく、どこから手を付けても良いところが国語・数学・英語の3教科とは異なる特徴といえる。社会にもこのような特徴が見られ、理科・社会はマトリックス型、国語・数学・英語の三教科は積み上げ式のピラミッド型という話をよくする。つまり、苦手な単元があるならばそこだけをピンポイントで学習すればいいという、なんとも学習効率のよい教科である。この点で、理科や社会は受験の直前の詰め込みとして重要視されるのである。誤解して頂きたくないのは、受験の直前は弱点単元の重点的な補強や、知識の穴を埋める時期であって、受験直前まで何もせず、直前だけで理科・社会の全てを復習しようというわけではない。むしろ、マトリックス型の教科はその特徴ゆえに3年次の内容だけ完璧にしても、1年・2年の内容は別個に復習し忘れない努力が不可欠なのである。

理社のくくりで話をしてしまったので、理科に特化した話に戻すことにしよう。中学校の理科で、最も重要なのは教科書に掲載されている実験と観察である。公立高校入試においては、教科書レベルを逸脱した試験内容にするわけにはいかず、必然的に教科書の実験・観察をベースとした入試問題になる。実験・観察の方法・手順から始まり、結果の理解・考察、周辺の重要用語の確認に最も勉強時間を割くべきである。

理科の出題形式としては、用語記述・選択問題・文章記述・計算問題が挙げられる。用語記述や選択問題は純粋に覚えているかどうかの確認である。一問一答形式で反復チェックすることが効率的である。文章記述は、実験結果の原因や現象の理由を説明させる問題である。これは日本語力も試されるため、実際に文章に起こしてみて、他の誰かに文章をチェックしてもらう必要がある。一人で書いていると重要なポイントを逃していたり、「てにをは」がおかしかったり、漢字ミスをしていたりと意外な所で失点しかねない。

理科を苦手とする方の多くは、計算問題に対して難色を示すのではないだろうか。まったく手が出せない方は、算数の比の計算や小数の計算、割合を復習することを強くお勧めする。また、自分の目標とするレベルにあわせて対策を練る必要がある。問題全体に占める計算問題の割合は難関校と言えど高くはないことは知っておいてほしい。

前述のように、公立高校の入試問題は教科書の実験・観察をベースとしているわけなので、どの都道府県でもそのレベルはほぼ同じである。そのため、自分の受験する都道府県の入試問題だけでなく、全国の入試問題を解くことも効果がある。解いた都道府県を白地図に塗っていくと「国盗り合戦」のように達成感を得ることもできる。最後に難関校受験に対してのアドバイスとしては、教科書内容に関連した発展学習が求められるため、より深く幅広い知識が要求されることがある。参考書も高校内容まで補足的に記述されているものを選ぶと良い。しかし、本質は教科書レベルが確実に得点できることにあることに変わりはない。できることならば、難関校を目標として、1年次から学校の進度に併せ、周辺知識も吸収していくことがベストである。

勉強の極意――社会

中学受験――クイズ形式でどんどん知識を吸収

中学受験の社会は、理科同様に配点は国語や算数の五割から八割程度に設定されることが多いから、主要科目とはいえない。しかし知識問題が大半を占める社会においては、記憶のコツさえ意識して勉強すれば十分に高得点をとることが可能であるので、苦手科目にしてしまわないようぜひ効率的な勉強を図ってほしい。中学受験の社会は、地理、歴史、公民、時事問題と、幅広い分野の知識が要求される。しかしながら歴史は日本史、地理もほぼ日本地理というように、ほとんどが国内に限定されている。これらをしっかり勉強することは、日本人としての常識を身につけることにもなるばかりでなく、将来控えている大学受験用の勉強の礎にもなるので、それだけでも十分に価値がある。

勉強のしかたは、基本的には暗記が中心なので理科のところで書いた方法がそのまま使えるだろう。当然イメージは非常に重要で、実際とは違う架空の映像でもかまわないので何か自分なりのイメージを頭に浮かべるのが肝心であるのは、直前に和田先生も書いている通りだ。フェーン現象を経験したことがなくたっていい。山から吹き下ろす熱い風を自分が汗だくで食らっている様子を想像すればいいのだ。豊臣秀吉の顔を知らなくたっていい。猿と呼ばれていたことを知っていれば、猿がチョンマゲの大人たちから刀を没収している絵を思い浮かべればそれで自分流の刀狩が完成だ。とにかく現場の映像を面白おかしくリアルに想像して、楽しみながらやればいい。

また歴史においては、年号を憶えるという重要な作業が待っている。しかしこれは、前の章で書いたような数字暗記のテクニックを駆使してバッチリ憶えてしまいたい。ゴロ合わせでももちろんオーケーだ。年号をしっかり憶えておくことは歴史の流れを身につけることにもなり、それはさまざまな知識の枝を伸ばすにあたっての根幹をなす。ぜひ重要視してほしい。

ちなみに理科や国語の知識問題でもいえるのだが、一問一答系の問題が多い社会では、クイズ形式でやると非常に吸収が早い。私が中学受験のときは、母がクイズ形式でかたっぱしから問題を出してくれた。喉元まで答えが出かかっているのに、「うー!出ないー!」と頭を抱え、脳ミソを振りしぼる。そこで「ほら、石狩川よ!」といわれて、「あー!そうかー!」となる。この感動体験が記憶にはとても有効なのだ。親にしてみるとかなり手間のかかることだが、子どもは楽しみながらできるし、「次こそはパーフェクトで答えてやる!」と頑張れるので、向学心を駆り立てる意味でもおススメである。もちろん友達同士でクイズを出し合って競ってもよい。同じくらいのレベルの相手との戦いなら効果は絶大だ。

そして昨今の入試では、時事問題の占める割合が年々大きくなりつつある。日ごろから興味を持ってニュースに接することの重要性はいわずもがなであるが、その習慣形成にはやはり家族の支えが欠かせない。記述問題が出題されやすいのも時事問題の特徴で、「政権交代」や「裁判員制度」などホットなトピックに関しては、しっかりと中身を理解したうえで自分の意見をいえるよう、夕食時などを使って議論の場を設けるといいだろう。

高校受験――つながりをきちんと意識する

高校受験の社会も中学受験と同様に、地理、歴史、公民の三分野が主な範囲になる。理科と同様マトリックス型の教科であるので、どこから手を付けても良いという長所を持ちつつ、学校の進度とは別に既習単元の内容を復習する必要がある教科である。社会もやはり教科書ベースの知識の整理が必要である。ただ、難関校ともなれば教科書から逸脱した問題が平気で出る。基本的には大学受験の勉強に準じるようなやり方で、必要なことだけを無駄なく効率的に憶えたい。

理科よりも覚えるべき項目が多いのが社会だ。用語を暗記するだけでなく、つながりを意識することが重要である。特に歴史は人の行為なのでそれぞれの出来事に対して必ず理由がある。例を挙げよう。「1333年 鎌倉幕府の滅亡」は、鎌倉幕府の封建制度であった「御恩と奉公」が「元寇」以降、崩壊し始めたことによる武士の不満から生じた出来事である。つまり、この時代の武士は、「命を懸けて外国からの侵略を食い止めたのに、その見返りが無いのは話が違うじゃないか」みたいな不満を抱いたことだろう。この人間の感情が歴史を動かし、作り上げてきたと言っても過言ではない。特に戦争はこのきっかけが重要で、歴史上の人間の過ちを繰り返さないようにすることも歴史単元を学習する重要な意義である。

このように、キーワードだけを単に覚えるだけでは知識は点在・散在しているに過ぎないものを、リンクして覚えることが重要であり、ひいては記述問題を解く役に立つのである。知識のリンクにメモリーツリーを作成することも有効である。最近、テレビのバラエティ番組などで、地名をいわれてそれがどこにあるか問われたタレントが、突拍子もない場所を指したり答えたりして笑いものになっている姿をよく見かける。しかし、中学受験や高校受験で社会をしっかり勉強した人は、そんな恥をかくことはまずない。何度もいうが、早いうちに基礎を身につけておくことは必ず将来の役に立つ。社会はとくにその要素が強いので、しっかり勉強したほうがいい。

勉強の極意――英語

中学受験――できるだけ早くから英語に触れる機会を増やす

中学受験の科目に、いまのところ「英語」はない。ここでは自分の英語に関する体験を書くので参考にしてもらいたい。私は父親の仕事の関係で、六歳から八歳までの二年間、アメリカのニューヨークで暮らした。訪米当時はまだ幼稚園卒園前だったが、制度のちがいで、あちらではいきなり小学校一年の中に放り込まれることになった。いかに悪ガキだったとはいえ、これは心細く辛かったことをよく憶えている。

とにかく最初は本当に辛かった。英語がまったくわからないから、友だちとの意思疎通ができない。相手のいっている内容が理解できないし、自分が主張したいことも伝わらない…と思っていた。しかしあるとき、腹をくくって身振り手振りを交えて、適当な英語での会話を試みた。英会話というか、ただの単語の羅列だ。するとそれを待っていたかのごとく何人かの友達が気さくに接してくれるようになった。それがきっかけだった。適当な会話ではあったが、段々とまわりとのコミュニケーションを深めつつ、素の自分を出せるようになっていった。それにつれて英語にあったネガティブなイメージは一気に吹き飛び、毎日が楽しくなり、すると英語も正しいものに近づいて行ったのだ。

このときに学んだのが、英語には慣れとフィーリングが大切であるということだ。文法知識を体系立てて知らなくても、じつはそれなりに相手のいうことは理解できるし、会話を成立させられることを知ったのである。しかしその後、日本に帰国してからは英語をまったく使わなくなった。当時憶えたことはほとんど忘れていたので、開成中学に入学してから本格的に英語を学び始めたときの力は、おそらく海外生活の経験がないまわりの生徒と変わらないレベルだった。とはいえ英語の上達率はなかなか良好で、英語の勉強でつまずくこともほとんどなかった。この理由は二つあると思う。

ひとつには気持ちの問題だ。英語が苦手な人というのは、勉強を始める前から心が負けていることが多い。「自分にはわからない」とか「自分は勉強してもわかるようになれない」と勝手に思い込むことで、努力することさえできなくしてしまっている。確かに英語は、日本の中でふつうに生活しているとほとんど触れる機会がない。その分、勉強への抵抗感や不安感は強くなりがちである。在米時、一度は自分もそういう経験をしたわけだが、小さいうちにそのネガティブな意識を克服できたのは良かった。プラスのイメージで取り組んでどんどんトライ&エラーしていったほうが勉強には断然有利に決まっている。つまり、できるかぎり早いうちから英語に触れておいて、プレッシャーのない状態で楽しみながら、とにかく慣れておく。これが、有効な攻略法になるのである。

そして慣れることには心理面以外にもう一つのプラス効果がある。これが二つ目の理由で、小さいうちから英語に触れておくことで英語を聞く耳が育つのだ。その結果、リスニング問題などで有利になることはもちろん、聞いたことをそのまま英会話の一連の流れ(フレーズ)として頭に残す力まで鍛えられる。音楽を小さい時からやっている子は絶対音感が育ちやすいのと、原理的には同じだ。その結果、前置詞問題などにおいては口をついてセットとなる前置詞が出てくるので、正解が得やすくなるというわけである。

こう考えると、子どもは幼少の頃から英語のアニメビデオを見るなど、とにかく英語に触れている機会を増やしたほうがいい気がする。アメリカ人の少年で英語に抵抗を感じている子はいないだろう。環境を与えられたときの人間の順応性を、幼いうちからぜひ意識的に活用したいところだ。なお、2011年度から国公立小学校の五、六年生を対象に、英語が必修化される。ますます早いうちから英語に触れる機会を与える重要性は増すだろう。何より英語は受験勉強で学んだことがそのまま実社会で生きるので、受験勉強の付加価値が最大の教科といえる。そういう意味では、最も時間とお金の投資価値のある教科といえるだろう。

高校受験――土台を固めて、慣れるべし

受験として英語を課せられるのは高校受験からだ。高校受験では大学受験と同様、英語は重要なポジションにあると言える。これは英語を中学校で初めて体系的に学習していることに起因するのではないかと推察する。英語を学ぶ入り口を先に書いているが、試験で得点をするためには、教科書レベルで要求されている単語、熟語、文法事項を憶え、それらを使った英文読解ができることが重要である。難関校ともなれば、やはり中学校で習う範囲を逸脱する。大学受験でも出題されるような「過去完了」・「仮定法」をはじめとする文法内容や、熟語のレベルも大学受験と同等のものが要求されるため、難関校受験を意識する方は単語帳や文法の参考書はワンランク上のものを用意して頂きたい。繰り返しになるが、他教科とのバランスを考慮して、志望校の過去問で傾向をおさえた上で、類似の問題を徹底的にこなしておきたい。

単語は発音しながらスペルミス無く覚えることが重要である。特に重要なのは「発音しながら」というところだ。音とスペルをリンクさせるのに役立つ。ゆくゆくは発音を聞いただけである程度のスペリングができるようになるし、発音やアクセント、リスニングの問題対策にもなる。

英語を学習する上で重要なのは文法単元である。覚えた単語をつなげる方法であり、長文を読むとき一文を解釈する際にも、文法を理解していないと誤った解釈になる可能性さえある。学校の授業では文章理解が重要視されるのに対して、学習塾では文法からのアプローチが採られているのは、この理由が強い。初めて塾で英語の授業を受ける中学生の生徒は、学校の英語と異なる進め方に最初は戸惑うかもしれない。しかし、英語を得点源にするためには、高校英語のように長文読解(リーディング)と文法(グラマー)を並行して進めることが中学英語でも要求される。文法といっても、難く捉える必要はなく、要は単語を一定の法則に従って並べるパズルだというゲーム感覚で解くと面白くなるのではないだろうか。

最後に、近年の受験において増えてきているリスニングについても触れておきたい。前述の通り英語は慣れが必要で、リスニングはその必要性が顕著に表れる。当たり前だが、リスニング問題で話をするのはネイティブの(英語を母国語とする)人だから、ネイティブの発音に慣れておきたい。しかし、ネイティブな人間が近くにいるというのは稀なケースであろう。ネイティブが近くにいて話す機会がある人は、その環境を幸運だと思いフルに活用してもらいたい。では、近くに英語圏の人がいない場合はどうするか。答えは、英語で会話しているものを意識的に取り入れるようにすることである。古くから利用されているのは洋楽や英会話のラジオだと思われるが、最近では海外ドラマや映画が豊富にあるので、自分の興味のあるものを利用するのもいいだろう。

勉強の極意――国語

中学受験――問題集を使って解答パターンを体に染み込ませろ

中学受験の「国語」は、算数と並んで配点が高く設定されている重要科目である。何より我々の母国語に関する学問であり、また主張の理解や登場人物の心情把握など、実生活のコミュニケーションにおいて必要な能力が鍛えられるのもこの国語という教科だ。ここはしっかりと攻略しておきたい。国語で最も重要な能力といえるのが読解力である。これは多くの文章を読み込まないとなかなか身につくものではない。もちろん「指示語や接続詞を意識しながら読む」といったテクニックを駆使することで文章構造はとらえやすくなるが、そもそも語彙力も経験値も少ない子どもたちに内容を正しく把握させるのは容易なことではない。

また、解答を書くにあたって記述力が要求されるようになると、文意さえ捉えられていない生徒にとっては泣きっ面にハチだ。これらは記憶でカバーできる漢字や言葉の意味などとはちがって、自力での対策が非常に難しく、実際に多くの文章を書いてそれを添削してもらうなどしないとなかなか鍛えることができない。そのためには、特に語彙の少ない小学生のうちは、親や教師が指導者になる形が望ましい。

論理的思考で答えを導き出す算数は、正解はいつも一つである。ところが国語では、特に記述問題の場合、感覚的な捉え方をしていると正解とされる答えに納得できないことはしばしばある。納得できないのに、×をつけられる。合っていると思ったのに、×をつけられる。「国語が苦手」「国語が嫌い」という人は、たいていはこの状態を打開できていないことが原因である。

これは大学受験の国語の場合も同じである。かつては私もこれにやられて国語が大の苦手科目になっていたことがある。そのときにやったのは、良質な解答が載っている問題集を購入して多くの問題を解き、とにかく模範解答の押さえているポイントから文体までをそっくり真似した。とにかくいろんな文章を読んで問題を解き、解答パターンを体に染み込ませたのである。これを繰り返しているうちに、あるとき突然、模範的な解答のコツのようなものがつかめたと感じた。そして、これをきっかけに国語の得点力が一気にアップしたのである。一問の配点が大きい国語だ。コツをつかんだことによる見返りは大きい。

作文や小論文の答えは人の数だけある。しかし一般的な国語の問題は、みんなが同じ答えにならないものは、つくらないはずである。ならば、小説であろうが物語であろうが、読んだときの自分の感想などはまったく抜きにして、機械的に文章を把握し、機械的に答えられるようにするのが、試験で必要な読解力なのだ。じつは国語の勉強で身につく読解力は、すべての科目の勉強のできを左右するくらいに大事である。なぜなら、どんな科目の試験でも、問題文は基本的にすべて日本語で書かれているからである。問題の意味を速く正しく理解するということが、問題を速く正しく解くために思いのほか重要であることは後に必ず気づくので、早いうちから鍛えておいたほうがいいだろう。

高校受験――都道府県ごと、学校ごとの、出題パターンに合わせた勉強を

高校受験用の国語の勉強であるが、これは和田先生が前述している大学受験用の極意にほぼ準じていいと思う。大学受験との大きな違いとしては、高校受験において「古文・漢文」の単元がどのように取り扱われるかが学校、都道府県ごとに大差があることだ。例えば古文も実は現代語訳が注釈としてまるまる書いてあり、そこから解釈する問題もある。この場合は難易度が低い。そうかと思えば、「係り結びの法則」をはじめとした古典文法まで理解していることが要求されるケースや、現代語訳など当然のようになく、古典単語の意味を答えさせる問題もある。これは難易度が高いと言える。まずは自分が受験しようとする学校の問題レベルを把握することから始めるとよい。国語は母国語がゆえに、学年に関係なく文章を読み、難易度を把握することができるからだ。

現代文の漢字・文法や文学史などのいわゆる知識問題は、配点が少ないとはいえ、出題ポイントが限られているため、手を抜かず学習してもらいたい。難関校入試においても公立高校入試においても数問の出題だが、得点源としてベースアップにつながる。

また、多くの公立高校の受験では作文が課せられる。しかも、書く必要文字数が多い分、配点も当然に高い。各都道府県の問題構成によるが、作文を白紙で提出することがもったいないので、最初に作文から書き始めることも戦略的に考えられる。また、この作文とは感想文ではなく、小論文に近い形式で問われる。小論文であれば採点基準が統一しやすいことが理由に思われる。すなわち、自身の立場を明確に示すこと、作文に当たっての問題独自のルール(具体例を挙げることや、図表の読み取りが要求される)が遵守されていること、一般的な作文のルールが守られていること、誤字・脱字が無いこと、全体の文章に統一性があること(論理矛盾が生じていないこと)が採点対象になっていることが多い。対策としては、やはり実際に書いて国語の担当者に採点してもらうことが一番である。他の都道府県の問題も作文だけでも通して学習することが重要である。

国語だけではないが、記述形式の問題は必ず先生に採点してもらうことが必須である。より良い解答にするためのアドバイスをもらったり、自身が気づかなかったミスを指摘してもらったりすることが、国語力・記述力の成長に大きく影響することは間違いない。

まとめ

第4章では、算数・数学、理科、社会、英語、国語の各科目について、中学受験と高校受験の両方の視点から、具体的な勉強の極意が詳しく解説されている。各科目の特性を理解し、効率的な学習方法を実践することで、確実に得点力を向上させることができる。算数・数学では基礎固めと解法パターンの習得、理科では五感を使った学習と得意分野の創出、社会ではクイズ形式での知識吸収とつながりを意識した学習、英語では早期からの慣れと文法の習得、国語では解答パターンの体得と記述力の向上が重要だ。保護者が子どもの学習をサポートする際の具体的な指針となる内容である。

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