難関校に合格する人の勉強法はいつの時代も同じ 第三章 成果を上げるための三つの極意

第三章では、学習成果を上げるための三つの極意として、「インプット」「定着」「アウトプット」の一連の流れが詳しく解説されている。記憶こそが全ての学習の根幹を成すという視点から、効率的なインプットの方法、確実な定着を促す復習法、そして記憶をすばやく出力するアウトプットの訓練まで、科学的根拠に基づいた実践的な方法論が提示されている。さらに、算数・数学、理科、社会、英語、国語の各科目別の勉強の極意も紹介されており、保護者が子どもの学習をサポートする際の具体的な指針となる内容だ。
この章の目次
記憶こそが全ての学習の根幹を成す
受験の科目は、「記憶系」と「思考力系」という見方で分類されることが多い。たとえば、理科や社会は記憶系で、算数・数学や国語は思考力系というように。理社のテストで高得点を獲得するためには細かいことをたくさん憶えなければならないので、これらが記憶系というのは確かにそのとおりだ。一方、数国は細かい知識を憶えるというより、理論や法則、公式などを用いて問題を解くのが基本になる。だから記憶系というより思考力系の教科であるといわれるのだが、これは問題の形式による錯覚で、数国だって効率よく解くためには記憶の力が大活躍するのだ。
算数・数学も立派な記憶系
数国は理社のように一問一答形式で知識が問われることが少なく、問題を解くときに思考力を要求されるように見えるが、実際は数国でも一問一答形式で答えるような知識が根底になくては思考などできない。算数・数学を例に考えるとわかりやすいが、まずそもそも、基本的な法則や公式を記憶していなければ、問題は解けないだろう。また、基本を少し習っただけで応用問題までスラスラ解けるという人も稀だ。勉強ができる人は、基本を記憶しているのは当然だし、それを使っていろんな問題を解き込んでいるうちに問題のパターンまで記憶しているというのが大半である。つまり、いろんな問題のパターンとその解き方をバッチリ記憶しているので、テストで高得点が取れるというわけだ。これが現実で、結局のところ、算数や数学だって立派な記憶系なのである。
国語のセンスも記憶で磨かれる
「自分にはセンスがない」とはじめからあきらめている人は、今一度考えを改めてみてほしい。もちろん生まれながらのセンスはあったほうがいいに決まっているが、受験は素質やセンスだけで決まるものではないし、センスは磨けるものである。そもそも大人が「素質がない」とか「センスがない」などというから、子どもはネガティブになってしまうのだ。塾でも、とくに数国では苦手意識が足かせになっている生徒がいるが、どの教科でもまず基本や解き方のパターンを暗記するのは変わらないんだと教え、基本パターンの学習を徹底させると、途端に成績が良くなる場合が多い。
また国語であるが、かつて国語の「センスのなさ」に頭を悩ませていた時期があった。他の科目はどれもテストで高得点を取っていたのに、国語に関しては平均点がやっとだった。当時は自分の国語のセンスのなさに愕然としているだけだったが、一念発起して問題集などで毎日似た出題パターンの問題をコツコツとやってみた結果、テストの点が見ちがえるように上がっていった。考えてみれば、国語はセンスと考えてほとんど勉強をしていなかったのである。しかし、過去問を解きこむうちに、論理的にすばやく文章を把握する読解力や、その論理に則って無駄なく必要な解答を書く記述力が磨かれた。つまり解き方の「コツ」をつかむことができたのだ。
漢字や言葉の意味などを憶えることはわかりやすい「記憶」だが、この解き方のコツの体得も、広義では「記憶」といえないだろうか。わかりやすい例を出すと、国語の「コツ」の体得は、自転車の練習をしているうちにいつか乗れるようになる、その「記憶」の感覚に近いものがあった。問題のパターンと模範解答をコツコツ見ていたことが模範解答の書き方の記憶になり、それがあるとき大きく花開いたということなのだと思っている。勉強のセンスは、必要なことを記憶していくことで必ず磨かれる。そう信じて勉強を続けていれば、必ず道は開けるのである。
インプットの極意――憶えるべきものを限定し、最も効率のよい憶え方を探れ
受験勉強の成否は、入試で点を取るために必要な知識をどれだけ多く記憶するかにかかっている。記憶力アップのための方法論はいろいろあるが、ここではポイントを紹介するので、「自分は記憶が苦手」という人でもあきらめずにぜひ試してもらいたい。まずはインプットのコツから話そう。インプットとは、記憶の入力段階のことを指す。そして考える、インプットにおいて最重要となる2つのコツは「イメージ」と「リズム」である。これをうまく使うと格段に憶えやすくなるし、また、記憶を引き出しやすくなる。
イメージのコツ――スクリーン法
イメージのコツは、憶えるときにそのものをなるべく「具体的に」「おおげさに」「非日常的な様子で」頭の中に思い描くということだ。記憶したものを思い出すときには何らかの映像が頭の中によみがえるので、憶えるときからなるべく具体的な形でイメージをつくっておけば効率よく思い出せる。具体的な姿、形を想像するのが理想だが、それができなければ文字のままでイメージを頭の中に焼き付けるのだっていい。字面を頭の中にしっかりと描きながら復唱すると、かなり憶えやすくなる。
ではイメージを思い描く「頭の中」の場所について、直感的に説明しよう。何かものごとを思い出そうとする時、人はきまって上の方を見る。上の方には何があるのかというと、頭の「スクリーン」である。そこに映像を映し出してものごとを思い出そうとするのが人間の想起の仕組みだ。ならば憶える段階でも、その頭のスクリーンにはっきり映像を映しておけば、あとから取り出しやすくなる。たとえそれが文字であろうともだ。この方法を「スクリーン法」と呼んでいる。
リズムのコツ――ゴロ合わせ
一方のリズムは、憶えるものが複数の見慣れない単語にまたがる場合や、姿や形のイメージをつかみにくいものを記憶するときに有効なコツである。このことを直感的に理解してもらうために、たとえばなにかの歌の歌詞を思い出そうとして欲しい。棒読みで歌詞を思い出すことができるだろうか?歌詞は、音やリズムに乗って口から出てこないだろうか。しかも次から次へと。歌になったとたん、人は驚くほど憶えていたりするものだ。これを記憶に応用するのである。
たとえば、いわゆる「ゴロ合わせ」はリズムを使った憶え方である。太陽系の惑星を憶える「スイキンチカモク……」や、化学の元素記号を憶える「スイヘイリーベー……」などは有名だ。これらは一気に大量のものを憶えられるという意味でも、非常に効率的なゴロである。ちなみにこのゴロ合わせ、有名なものを必ずしも真似しなくてはいけないというわけではない。自分でどんどんオリジナルのものを作ってしまって構わない。自分の中でそのリズムや音と一緒に記憶が定着すれば、はっきりいってなんでもいいのである。
イメージとリズムの組み合わせ
ちなみに、ゴロ合わせのときのリズムにイメージをプラスすると、さらに憶えやすくなる。七九四年の平安京遷都は「ナクヨ(七九四)ウグイスヘイアンキョウ」と憶えるのが定番になっているが、このときにウグイスが京都付近で「ホーホケキョ」と鳴いている様子を想像すると、さらに記憶の定着や引き出しがよくなる。こんなふうにイメージとリズムを使いながら記憶する作戦を映画になぞらえて「スクリーン法」と呼んでいる。スクリーン法による記憶の映画は、つくるのも使うのもすべて自分の頭の中なのでお金がまったくかからない。オリジナルの記憶映画をつくればつくるほど知識の量は増えていくので、楽しみながらどんどん記憶するといいだろう。
ただし、なんでもかんでも記憶術でというのは効率がよいとはいえない。人には性格などにより憶えにくいものとそうでないものがあるから、憶えにくいものや忘れたら致命的になるようなものだけに記憶術を適用するのがいいだろう。
定着の極意――確実な記憶にする復習法
記憶には「短期記憶」「中期記憶」「長期記憶」がある。短期記憶は、たとえば一時的に電話番号などを憶えるときなどの記憶である。ただこの記憶は、電話をかけ終わったころには忘れている程度の記憶であるのが常だ。それを少し進化させたものが中期記憶で、このレベルになると数時間から1ヶ月程度は保持することができる。そしてさらに進化させて長期記憶にまでもっていけば、そう簡単に忘れることはなくなる。たとえば自分の家の電話番号などは、長期記憶に入っている。受験において必要なのは、この長期記憶である。
メモリーサイクル法で無駄なく反復
では短期記憶を長期記憶まで進化させるためには、どのようにすればよいのだろうか。自分の家の電話番号を忘れないのはなぜかを考えれば、すぐにわかることである。じつは反復する以外に方法はない。これはどんな生徒にも共通でいえることである。しかしこの反復のやり方は効率化できる。成績はそこで差がつくといえるのだ。短期記憶や中期記憶は、時間が経つとほとんど忘れてしまうという性質がある。受験生は毎日の勉強や定期テスト、模試などでいろいろな新しいことを憶えるが、新しい知識はすべて中期記憶どまりのため、何もしないとほとんど頭に残らない。受験に必要なのは長期記憶であるのは明らかなのに、意外に多くの受験生はこのことに気づかずに新しい短期記憶ばかりを増やそうとする。
ではどうするのが効率的かといえば、簡単である。せっかく新しく勉強したのなら、それを無駄なく長期記憶として定着させるのである。せっかく一度憶えたのなら、忘れてしまったらもったいないという気持ちを持つのが大切だ。そのためには一度憶えたものに定期的にアクセスして忘却を食い止めるしかない。繰り返すが、反復によるメンテナンスしか長期記憶として定着させる手段はない。これがいわゆる「復習」である。
忘却曲線を活用した復習サイクル
ならば同じものの復習を毎日毎日1ヶ月間続けましょう…では、全く効率的な記憶法とは言えない。やらなくてはいけないことはほかにもあるわけだし、そんなことをしていたら時間がいくらあっても足りない。そこで、忘却曲線を思い出してほしい。記憶には、忘れかけたころに思い出すことで、より強固な記憶として残るという性質がある。すると忘れかけの状態を意図的に作り、そのタイミングで復習を入れるのが効率的な復習ということになる。つまり適切な間隔をとって復習すれば、回数は削減でき、効果は大きくできるのだ。これを「メモリーサイクル法」と呼んでおり、生徒たちに実践をうながしている。
たとえば考える理想の復習サイクルは「一・三・一・三・一」だ。最初の「一」は勉強してから一時間後という意味。忘却曲線によれば、この段階でも忘却率は50%を超えるとされている。次の「三」は三時間後で、以下、一日後、三日後、一週間後というふうに復習を入れていく。これはあくまで一つのパターンにすぎないが、無計画に復習をするより格段に定着率はよくなる。五回もできないという人は、回数を減らして「一・一・一」でやってもいい。一時間後、一日後、一週間後の復習でも、やらないときと比べたら定着がよいのはもちろんのこと、同じ三回の復習でも、一時間後、二時間後、三時間後にやるよりはるかに効果的だ。
弱点度合いを記録する
もうひとつだけ、この復習をさらに効率的にやる方法を紹介しよう。間違えた部分になんらかの形でチェックをつける人は多いと思うが、これは必ず「問題」の方につけてほしい。ノートや解答用紙の方にしかチェックをつけていないと、復習の際にいちいち問題を調べるという手間が発生するので面倒だ。そしてそのチェックがついている箇所は当然やり直さなくてはならないわけだが、さらに間違えた場合はその分だけチェックマークを重ねていってほしい。すると何度も間違えていれば、何重にもチェックがつくことになる。そうすればゴツゴツとしたチェックの箇所が要注意箇所ということは、後から見ても一目瞭然だ。このように「弱点度合い」が分かりやすく記録されていることは、後から総復習などする際に大きな味方となろう。
とにかく記憶は繰り返しやらないことにはなかなか定着しない。残念ながら一度の勉強ですべて憶えられるなんてことがないのが現実である。憶えられなければ何十回と繰り返さなくてはいけないのは当然だが、どうせやるなら記憶のメカニズムを知った上で、「無駄なく」効率的にやりたい。
アウトプットの極意――記憶をすばやく出力する脳内回路を作り出す
ここでは2つの意味でのアウトプットについてお話ししたい。テストで失点するおもな理由は二つある。一つは「注意力不足」。できたはずなのに単純なミスで失点するパターンで、これに関する対策は第七章で述べる。もう一つは「知識力不足」。これは早い話が、知らないものは解けないから得点にならないということである。知識力不足の場合、原因が単純に「知らない」ということであれば、対策はいたって簡単だ。頑張って勉強をして知っていることを増やせばいいのである。当然の論理である。
知識をアウトプットする力の不足
ところが、知識力不足といっても、単純に「知らない」ことが原因でない場合がある。知識をアウトプットする力が不足しているときである。知識力には、蓄えた記憶をすばやく表に出し、それをうまく組み合わせて答えを導き出す力も含まれるのである。これが不足すると、テストで失点することになる。わかりやすくいうと、重要事項は頭にインプットされているが、「知っているつもり」や「わかったつもり」になっているだけで、いざそれを出そうとすると、うまく整理して出せないという状況である。
実戦形式でのアウトプット訓練
この対策にはアウトプットの訓練が必要になる。定番は問題集で、この場合は徹底的に実戦形式でやってみることが大事である。入試本番に近い形で訓練がしたければ、模擬試験を受けるというのも一つの手だ。ともかくある程度の緊張感の中で制限時間内に問題を解くという状態に頭を慣らすことが重要である。そうすることで頭の中の知識が整理されて、アウトプットがしやすくなってくる。
説明することで理解を深める
なお、目的がアウトプット訓練ならば、もっと簡単にできる方法もあるから紹介しておこう。自分の理解していることを誰かにわかりやすく説明してみるという方法である。この場合、対象は実在する人でなく、そこに誰かがいるつもりでやってもいいだろう。この方法を使ってよく一人で勉強したし、いまは自分の塾でもよく生徒に説明させるということをやっている。この方法がいいのは、記憶や理解が中途半端だと相手が理解できるように説明するのが困難な点である。記憶不足や理解不足の点を明らかにすることができるので、アウトプットの訓練だけでなく、反省にも活かすことができる一石二鳥の方法である。
記憶のフックで思い出しやすくする
また、記憶を引っ張り出すという意味でのアウトプットは、先述した「記憶のフック」と関係する。フックがあるからこそ思い出しやすいのだ。記憶のフックとは、記憶を引き出すための手がかりとなる情報のことだ。イメージやリズム、関連付けなど、様々なフックをたくさんつけることで、記憶をすばやく出力する脳内回路を作り出すことができる。フックが多ければ多いほど、記憶は引き出しやすくなるのである。
科目別勉強の極意
科目別の攻略法に関して、中学・高校受験を中心に書くことにする。まずは「数学」ならぬ中学受験の「算数」からだ。中学受験において算数は最重要科目といえる。特殊な一科目入試を除き算数は必ず試験科目に入っており、しかも配点が高く設定されていることが多いからである。さらに算数は、設問の数が他の科目よりも少ないため、一問あたりの配点が高くなる。それによって算数のでき次第で合否が左右されることになるのである。
算数・数学――わかるところまで戻る勇気
受験の算数で求められるのは何なのか。それは計算力と論理力だ。与えられた条件を整理しながら正解にたどり着くという一連の作業を論理的に行えるか。またその過程でいかに素早く正確な計算ができるか。それらが問われている。つまり算数の攻略のカギは、いかにこの二つの力を備えるかということになる。そしてある一定レベルを超えたときに差がつくのは、特に論理力の部分だ。受験の算数では、豊かな発想力などは必要ない。9割以上の問題は、いくつかの解法パターンを身につけていれば、あとはそれを論理的に組み合わせるだけで十分対応可能なのである。
ただし解法パターンを身につけるときに注意しなければならないのは、ただ公式の暗記のように憶えるのではなく、その都度正解までの道すじを確認するようにして、論理的に考えながら繰り返し練習することである。そしてそのためには、基礎が固まっていることが重要になってくる。なぜなら、これがないと解法パターンを構成する要素そのものがそろわなくなるからだ。ここでいう基礎は、たいていの塾で小学五年生~六年生前半までに教わっているはずで、受験まで少なくとも半年以上を残した状態で、一通りの算数の解法は習ってしまうのだ。
まだ幼い小学生にとっては「出来た!」という成功体験はとりわけ重要だ。だからウソの上塗りのようにわからないところをごまかしごまかし進めて砂上の楼閣を築くよりも、苦手な子は理解できなかったところまで戻ってやり直したほうがいい。「急がば回れ」というのは本当で、一見遠回りに見える行為でも、これをやることで「苦手」から一転して「得意」になることが現実に多い。「出来た!」という喜びが興味をかきたて、抜けていた基礎自体も再確認できるからだ。この基礎固めは六年生の夏までには終わらせておくのが理想だ。
理科――五感で憶えることと得意分野をつくること
中学受験の理科は、学校によってちがうが、配点は国語や算数の五割から八割程度に設定されることが多い。主要科目とはいえないが、受験は総合点の勝負であるから、他の科目の仕上がりも考慮しつつ、学習に取り組むことが重要だ。理科の勉強にあたって勧めたいコツが二つある。一つは五感を使いながら憶えるという方法だ。記憶には「イメージ」が重要であることは前章で書いたが、たとえば昆虫の名前や体の構造などは、一度実物を見ておくと憶えやすくなる。図鑑やインターネットなどで写真を探して見ておくといいだろう。
もう一つのコツとしては、「理科嫌い」な人に向けて心理的なことを挙げたい。中学受験の理科は範囲が広いので、「全部が嫌い」というふうにはなかなかならない。昆虫は嫌いでも花は好きとか、あるいは宇宙には興味があるなどである。不思議なもので、人間はある分野で結果が出ると、他の分野でも出せるにちがいないと思うのか、一生懸命やるようになる。この心理を利用して、まずは得意分野を一つつくり、そこでの成功体験をベースにモチベーションを上げつつ、他の分野も攻略していくといいだろう。
社会――クイズ形式でどんどん知識を吸収
中学受験の社会は、理科同様に配点は国語や算数の五割から八割程度に設定されることが多いから、主要科目とはいえない。しかし知識問題が大半を占める社会においては、記憶のコツさえ意識して勉強すれば十分に高得点をとることが可能であるので、苦手科目にしてしまわないようぜひ効率的な勉強を図ってほしい。勉強のしかたは、基本的には暗記が中心なので理科のところで書いた方法がそのまま使えるだろう。当然イメージは非常に重要で、実際とは違う架空の映像でもかまわないので何か自分なりのイメージを頭に浮かべるのが肝心である。
また歴史においては、年号を憶えるという重要な作業が待っている。しかしこれは、前の章で書いたような数字暗記のテクニックを駆使してバッチリ憶えてしまいたい。ゴロ合わせでももちろんオーケーだ。年号をしっかり憶えておくことは歴史の流れを身につけることにもなり、それはさまざまな知識の枝を伸ばすにあたっての根幹をなす。ぜひ重要視してほしい。ちなみに理科や国語の知識問題でもいえるのだが、一問一答系の問題が多い社会では、クイズ形式でやると非常に吸収が早い。親にしてみるとかなり手間のかかることだが、子どもは楽しみながらできるし、「次こそはパーフェクトで答えてやる!」と頑張れるので、向学心を駆り立てる意味でもおススメである。
英語――できるだけ早くから英語に触れる機会を増やす
中学受験の科目に、いまのところ「英語」はない。ここでは自分の英語に関する体験を書くので参考にしてもらいたい。英語には慣れとフィーリングが大切であるということだ。文法知識を体系立てて知らなくても、じつはそれなりに相手のいうことは理解できるし、会話を成立させられることを知ったのである。できるかぎり早いうちから英語に触れておいて、プレッシャーのない状態で楽しみながら、とにかく慣れておく。これが、有効な攻略法になるのである。そして慣れることには心理面以外にもう一つのプラス効果がある。小さいうちから英語に触れておくことで英語を聞く耳が育つのだ。その結果、リスニング問題などで有利になることはもちろん、聞いたことをそのまま英会話の一連の流れ(フレーズ)として頭に残す力まで鍛えられる。
国語――問題集を使って解答パターンを体に染み込ませろ
中学受験の「国語」は、算数と並んで配点が高く設定されている重要科目である。何より我々の母国語に関する学問であり、また主張の理解や登場人物の心情把握など、実生活のコミュニケーションにおいて必要な能力が鍛えられるのもこの国語という教科だ。国語で最も重要な能力といえるのが読解力である。これは多くの文章を読み込まないとなかなか身につくものではない。また、解答を書くにあたって記述力が要求されるようになると、文意さえ捉えられていない生徒にとっては泣きっ面にハチだ。
かつては私もこれにやられて国語が大の苦手科目になっていたことがある。そのときにやったのは、良質な解答が載っている問題集を購入して多くの問題を解き、とにかく模範解答の押さえているポイントから文体までをそっくり真似した。とにかくいろんな文章を読んで問題を解き、解答パターンを体に染み込ませたのである。これを繰り返しているうちに、あるとき突然、模範的な解答のコツのようなものがつかめたと感じた。そして、これをきっかけに国語の得点力が一気にアップしたのである。一問の配点が大きい国語だ。コツをつかんだことによる見返りは大きい。
まとめ
第3章では、学習成果を上げるための三つの極意として、「インプット」「定着」「アウトプット」の一連の流れが詳しく解説されている。記憶こそが全ての学習の根幹を成すという視点から、イメージとリズムを活用した効率的なインプットの方法、忘却曲線を活用したメモリーサイクル法による確実な定着、そして実戦形式や説明によるアウトプットの訓練まで、科学的根拠に基づいた実践的な方法論が提示されている。さらに、算数・数学、理科、社会、英語、国語の各科目別の勉強の極意も紹介されており、保護者が子どもの学習をサポートする際の具体的な指針となる。これらの方法を実践することで、子どもの学習成果は確実に向上し、合格への道筋が見えてくるだろう。