開成番長の記憶術 第4章 インプットノウハウその3 数字〜応用自在のスグレもの〜

本章では、数字を活用した記憶術を解説する。レターカウントによる文字数把握、数字へのイメージ付加、英単語の記憶法、チャンクの概念、そして折れ線グラフ式記憶術。数字は全体像を定量的にとらえる骨格として機能し、特徴記憶やゴロ合わせと組み合わせることで、驚くほど記憶の精度が向上する。
この章の目次
レターカウント
1つで複数を表現する数字
数字は実はものすごく優れた「文字」だ。7個のまんじゅうを描かずとも、まんじゅうの絵を1個描いて×の記号とともに「7」という数字を一文字書けば十分に事足りる。この「7」という数字を強く念じて覚えることで、6個だったか8個だったか混乱することなく、きちんと7個と記憶することができる。まんじゅうの絵に、数字による裏づけができるのだ。
文字に数字の補助を加える
「おいしい! たのしい! 笑顔のテーブル。」というキャッチコピーを覚えるとき、「4、4、7」という文字数を補助として頭の中に考えているだろうか。この数字が軸として記憶に入っていれば、「おいしい! たのしい!
みんなのテーブル。」という表現は「何かが違う」ということに気づける。最後のフレーズが「長いぞ」と感じることができる。さらに特徴記憶とゴロ合わせをからめよう。漢字が「笑顔」だけという特徴、頭文字「お、た」から「オータ!」というゴロ。この3つのアプローチで記憶を試みる。
レターカウントで全体像の定量的インプット
数字は、全体をとらえるベースとして大きな存在価値を発揮している。人間に例えるなら、「笑顔」という漢字は「ほくろ」、「オータ」は「眼鏡」のような細部の情報だ。それに対して言うなれば骨格(体型)のような役割を果たしているのが、この文字数だ。身長185cm、体重78kgみたいな定量的な値のデータだ。それを意識的にとらえて記憶の補助ツールにするのが、レターカウントの技術なのだ。これを意識するだけで、格段に誤字は減り、ミスに気づく力は上がる。家庭では、子どもが漢字を覚えるとき、文字数を一緒に数える習慣が記憶力向上につながる。
数字を味方につけるには
数字それぞれにオリジナルのイメージを!
レターカウントを強力な武器にするためには、数字に慣れ親しまなくてはならない。まず数字にイメージを付加してあげよう。例えば、1→ナンバーワン、2→ダブル、3→準ラッキーナンバー、4→忌み言葉の「死」、5→自分の誕生月、7→ラッキーナンバー。人によってさまざまだが、それで問題ない。
数字に何らかの意味を見出す
数字同士に何らかの意味や関連性を見出す。何でもいいのでその数字の並びに何か補助的な説明をつけるのだ。「4、4、7」の例を考えてみよう。4が2つ並んでいて、そして7。戦闘力が4の兵隊が前に二人いて、その後ろにちょっと強い7の兵隊が騎馬に乗っているような絵を想像する。「合計15」みたいな情報も頭に置いておけばいい。4、7、7だったら傘のように上が広いイメージがわく。7、4、4とごっちゃにならないように、昇順に並んでいるという情報も頭に入れれば完璧だ。
だまされたと思って練習あるのみ!
近くにある雑誌の見出しや看板のキャッチコピーで、文字数カウントをしてみよう。意識的に文字をカウントし、その数字に意味を持たせよう。数字と「遊ぶ」感覚が身についてきたら、数字の情報を意識した上で文全体のイメージをとらえ、さらに目立つポイントに目をつけ、必要とあらばミニゴロを添える。最初は面倒に感じるかもしれないが、慣れてくると普段から文字数を「無意識で意識」するようになる。インプットの際、その文の特徴である「骨格」の情報を無意識のうちに仕入れているので、記憶にとって非常に有利だ。
英単語のつづりを覚えるには
英語はどこでつまずくか
英単語を覚える際には、3つの関門がある。つづり、発音、意味だ。つづりは実にやっかいなもので、英語の発音とつづりの関係は複雑だ。音声で聞いただけの単語ではなく、見たことのある単語を、いかにしっかり覚えるかがテーマだ。一度見た単語のつづりを忘れないようになるべく強くインプットする方法を学ぼう。
レターカウントで文字数のミスを減らす
「February」という単語には罠が2ヶ所ある。エルとアールの問題、そして「rua」の部分だ。油断するとFebrualyとかFebraryなどという間違いが起こりかねない。そこを2つの方向から支えよう。まず特徴記憶として、ruaryに注目して強く覚える。エルがなくアールしかないということを意識する。そしてレターカウントだ。8文字!
ということを強くイメージしながら、文字を脳内スクリーンに映す。さらに「3+5=8」というふうに分解して記憶すればベターだ。
長い単語の特徴づけ
「acquaintance(知り合い)」という単語を考えよう。音節で切るのが自然だが、ここは好みで構わない。「acquain+tance」で「7+5だな」と全体像をとらえることが可能になる。単語を分けるときはせいぜい2つか3つにとどめておくのがいい。間違えそうな部分を考えると、acquの部分が最大の難所だ。ここは絶対に間違えないよう強い意識づけをする。「アククゥ」などという日本語読みをあててもいい。この7+5のバックボーンが強力な裏づけになり、単語全体を支えてくれるのがレターカウントの強みだ。家庭では、子どもが英単語を覚えるとき、文字数を一緒に数えて分解する練習が効果的だ。
英単語の意味も覚えるには
人名の覚え方=英単語の覚え方
第2章の名ふだ法を思い出してほしい。名前の漢字を人の顔に重ね合わせることで、一体化した映像として覚えてしまうものだった。この発想を英単語にもそのまま使おう。モノであればモノ、概念であれば概念のイメージを頭に思い浮かべ、その上に英単語を重ねるのだ。
立体視による記憶法
『3D飛び出る英単語トビタン』という本では、立体視を使った記憶法が紹介されている。映像と文字を重ねるにとどまらず、アクセントとスペルも覚えやすくなるような仕組みを取り入れている。「evidence」なら虫眼鏡で指紋を拡大している様子、「absorb」ならスポンジが洗剤を吸収する写真。こういうイメージを頭に入れるのと、単に丸暗記するのとでは、記憶のしやすさ、長期にわたる保持力ともに比べ物にならない。
直感的把握の効力
「expert」では冒頭のeにアクセントがあるのが正しい発音だが、和製英語の「エキスパート」ではパにアクセントを置くため間違いやすい。しかし「expert」と大きさで書いて覚えてしまえば確実に覚えられる。今まで英語のアクセントは、文字の上にある小さなアクセント記号で覚えていたが、大きさで覚えてしまうわけだから、理屈ではなくて直感的右脳的記憶ということができる。家庭では、子どもが英単語を覚えるとき、単語の意味を表す絵を一緒に描いて、その上に英単語を重ねて書く活動が効果的だ。
人間が記憶可能なカタマリの数
感覚記憶で処理できる情報の数は4
「ありしかいませにぬたなつすき」という意味不明な文字の羅列を読むとき、ほとんどの人が「ありしか」もしくは「ありし」でいったん切ったはずだ。記憶の「入口の入口」にあたる感覚記憶によって人間が一度に処理できる情報の数は、基本的には4つまでと言われている。電話番号やクレジットカードの番号が4つずつに分けて表示されているのは、そういった人間の特徴に対応したものだ。
チャンクの数は少ないほうがいい
一連の意味群としてとらえることができるカタマリのことを、専門的な言葉で「チャンク」と言う。チャンクの数が少ないほうが、人間は物事を記憶しやすい。「もも、りんご、かき、ぶどう、なし」(6チャンク)と「サンフランシスコ、リオデジャネイロ」(2チャンク)では、文字数が多くても後者のほうが覚えやすい。チャンクの数が少ないからだ。
マジックナンバー7
人間が短期記憶で保持できるチャンクの数は、一般的に「7プラスマイナス2」の範囲にあると言われている。つまり、個人差はあるが5〜9の範囲だ。これをマジックナンバー7という。10個以上のものを無秩序に記憶するのが人間にとって非常に難しいということを意味している。しかし第3章のゴロ合わせやストーリー記憶は、チャンクを減らすための作業なのだ。自分の知っている情報と結びつけることで、2つを1つにする。大量のものを一気にまとめて覚えるゴロは重宝される。意識したチャンク減らしをどんどんやろう。家庭では、覚えるべき項目をグループ化してチャンクを減らす練習が記憶力向上につながる。
電話番号を一発記憶!
電話番号を簡単に覚えるための方法
折れ線グラフ式記憶術という、電話番号を覚えるためのテクニックを紹介しよう。携帯の電話番号や東京の電話番号は、ボーっと見ていたら8チャンク(最初の090や03は除く)、何も工夫せずに覚えるのはなかなかキツイ。「03-5292-7751」という電話番号を例に考えてみよう。
言葉を補いつつ数字の大小に注目して脳内折れ線グラフを作る
折れ線グラフ式記憶術では、まずこれら数字の「大小」に注目する。最小の数字は0、最大の数字は9、そして小さい数字ほどグラフの下、大きい数字ほどグラフの上に位置づけ、それらを順番に線で結ぶ。次にこの折れ線の形の特徴をスクリーン法でイメージに焼きつける。その際、言葉を補って考える。「真ん中(5)からスタート。2—9—2は高い山。後半は奇数構成。ラッキー並んで(7、7)、下がって(5)、ド下がる(1)」。こんな感じだ。数字の大小に基づき図をイメージしながら、その形を補助する言葉をつけ加える。右脳を使いながら、左脳による補助をするのだ。
重要なのは補助の言葉
形状をサポートする言葉は、この方法を成す上で大変重要な要素だ。大切なのは「上がり下がり」だ。次は上がるのか下がるのか、それもどこまで上がるのか下がるのか。それを言葉で補うわけだ。形状や折れ線の角度を、映像だけで正確に覚えるのは至難の業だ。「大小」や「偶数奇数」などの言葉のサポートとともに、なんとなくの形がわかれば十分なのだ。もちろん、ゴロを補って考えても全く問題ない。「並んで」「奇数」「偶数」「山型」「谷型」「足して○」「平行に」といった補助の言葉を活用しよう。家庭では、子どもが電話番号を覚えるとき、一緒に折れ線グラフを描いて言葉を補う遊びが記憶力向上につながる。
まとめ
数字は記憶の骨格として全体像を定量的にとらえる優れたツールだ。レターカウントで文字数を意識し、数字にオリジナルのイメージを付加する。英単語では文字数とイメージを組み合わせて覚え、チャンクの概念を理解してゴロ合わせやストーリー記憶でチャンク数を減らす。折れ線グラフ式記憶術では数字の大小関係と補助の言葉を組み合わせる。家庭では、文字数を数える習慣、数字と遊ぶ感覚、単語を分解して覚える練習、チャンクを意識したグループ化、折れ線グラフを描く活動が効果的だ。「無意識で意識」できるようになれば、記憶にとって非常に有利になる。数字を味方につけることで、記憶の精度が驚くほど向上する。