開成番長の記憶術 第2章 インプットノウハウその1 特徴〜目立つ部分を印象的に〜

本章では、記憶の第一段階である「記銘」を強力にするための具体的なテクニックを紹介する。特徴をとらえて強調するデフォルメの発想、漢字や人名を映像として焼きつける方法、そして間違えやすいポイントを先読みする戦略。印象に残る人が特徴的な部分を持つように、覚えるべき対象も特徴を強調することで確実に記憶に残すことができる。
この章の目次
特徴的な部分を強調する
印象に残る人、残らない人
一度に多くの初対面の人と出会うとき、印象に残る人とそうでない人がいる。印象に残る人は、どこかに特徴的な部分を持っている。ものすごくキレイな人、声が大きい人、動きが怪しい人。その特徴が自然とこちらのアンテナにキャッチされるから、後になって印象的だと思うのだ。
デフォルメされたうまい似顔絵
芸能人の似顔絵は、特徴的な部分を強調して表現するデフォルメがなされている。眉毛が濃い、唇が分厚い、目が大きい、アゴが強調される。実物そのままのサイズバランスではないが、「特徴をよくとらえている」からこそ「うまい」と感じる。デフォルメされた絵の存在により、我々はその人物の特徴をより強調して覚えることにもなる。
特徴的なポイントをとらえて強調!
印象的な人は特徴的な部分が際立っている。その特徴は万人に共通である必要はなく、自分にさえ特徴的であればいい。地味であまり目立たない人にも、どこかに特徴はある。ならばその特徴を強調するのだ。これは人物に限らず、物や言葉にも応用できる。漢字、英単語、すべてに応用可能なテクニックだ。
漢字の特徴的な部分を強調①
人の顔も漢字も、特徴をとらえるのが大切
人の顔を思い浮かべる場所が、スクリーン法のスクリーンだ。記憶を呼び起こす際にそこに浮かぶのだから、インプットの際にそこに強く映すことは非常に理にかなっている。では人の顔を漢字に変えて考えてみよう。「燕(つばめ)」という複雑な漢字を例に、特徴をとらえる方法を学ぶ。
特徴を強く意識して焼きつける
「燕」という漢字のポイントは3つ。かんむりの横棒の有無、中段の「北」の間に「口」がはさまっていること、下の「れっか」に線が入るか否か。この字が間違えやすいのは、「蒸」と似通っているからだ。ならば両者の違いを強く印象に残そう。「燕は空を飛ぶから棒が上にあがった」「まんなかの口はつばめの口そのもの」「下の4つの点は広がったしっぽ」。こんな間抜けな想像を、だまされたと思ってやってみてほしい。絶対に印象に強く残る。
既知のものに関連させて記憶を増やす
すでに知っている知識に関連させて派生させることで、記憶のストックを増やしていく方法は非常に有効だ。既知のものとは、頭のスクリーンにすでに引っ張ってこられる状態になっているもの。それを拠点に考えたほうが効率がいい。家庭では、子どもが新しい漢字を習ったとき、似ている漢字との違いを一緒に確認し、面白いイメージを作る遊びが効果的だ。
漢字の特徴的な部分を強調②
紛らわしい熟語の覚え方
「対照」「対称」「対象」「大勝」「大正」。同音異字の熟語は、漢字自体は書けるのにどれを使っていいかわからない混乱を招く。これらが紛らわしいのは、「対」という字とセットでよく目にする熟語だからだ。では、間違いを防ぐためにはどうすればいいのか。
間違っていてもいい! 自分なりのイメージをつける
大切なのは、それぞれの熟語に意味による分類をしておくことだ。自分なりのイメージで構わない。例えば「対照」なら明るい顔と暗い顔の二人をスポットライトが照らしている状態、「対称」なら左右対称の蝶、「対象」なら矢印が人のほうを向いている状態。熟語から具体的なイメージを作り出し、そのイメージの中に熟語の漢字自体を乗せてしまう。そうすると自分の中で分類され、整理されていく。
代表的な例文を作る
主語を置き換えやすい代表的な例文を作って頭の中に保存しておく。「対照的な二人だね」「左右対称、線対称」「このゲームは小学生が対象です」。その例文の様子を強く頭にイメージする。仮にニュアンスが間違っていても、自分の中での分類ができていれば構わない。後に修正が必要なら、新しいイメージを作り保存し直せばいい。
人名記憶の必殺技「名ふだ法」
全体から感じる雰囲気は大事、その中で特徴を強調
人の顔と名前を覚える能力は実生活でとても役立つ。毎日顔を合わせていれば何度も復習している状態だが、時々しか会わない人はそうはいかない。ならばインプットをなるべく強烈にする。まずその人全体の雰囲気を第一印象として持っておく。次に細部に注目し、特徴的な部分をデフォルメする。さらにしゃべり方やしぐさなど、細部の情報も付加してインプットする。
名前と顔を一体化した映像で記憶する
人の名前を記憶するときは、その人の顔をしっかりイメージに焼きつけながら、同時に名前の漢字をその映像に重ねている。そして音をその映像に流している。「私は加藤です」と言われたときにその人の顔を見ながら「加藤」という漢字を頭のスクリーンに映す。と同時に「かとう」という言葉(音)を頭の中にリピートする。
名ふだ法の実践
人は反射的に、名前を聞いたとき文字を頭に浮かべようとする。「ハシモトさんですね。漢字は橋に本で大丈夫ですか?」という会話が発生するのはそのためだ。名前をしっかり頭に浮かべた上で、音声としても「加藤さんだな、加藤さんだな」と何度か繰り返して自問自答しながら確認する。短期記憶から中期記憶に持っていくための復習を入れているのだ。会話が終わるころには、その人の顔と名前が一体化して一つの映像+音声としてインプットされる。家庭では、子どもに新しい友達の名前を聞くとき、漢字を一緒に確認する習慣が記憶力向上につながる。
人名漢字を間違えないよう!
人名漢字は多種多様。だからこそ必要なイメージ
人名の漢字は非常に紛らわしい。堀北真希さんの「希」と相武紗季さんの「季」、どちらも「き」だが字が違う。間違えると大変失礼なので、しっかりできるようにしておきたい。やはりこれもイメージだ。「希」の漢字や「季」の漢字が持つイメージを、名ふだ法をおこなうときに相手の映像に重ねる。堀北真希には希望っぽいイメージを、相武紗季には季節っぽいイメージを付加する。
間違えそうなポイントを予測する
相武紗季には「紗」というトラップもある。同じく女性の人名でよく使われる「沙」の字が存在するからだ。こういうケースでは、「ここは間違えやすそうだ」ときちんと意識して、その部分を強調して覚えるのが大切になる。「いとへん」と「さんずい」の違いだ。相武紗季の映像と「紗」の字と一緒に、糸巻きに巻かれた糸をスクリーンに映そう。間違えそうなポイントを予測してそれを深く記憶するというのは、記憶において非常に大切なポイントだ。
字と性質が一致しなくても特徴になる
人名のやっかいなところは、その漢字の一般的なイメージとその人の雰囲気が必ずしも一致していないところだ。「静香」という名前なのにとても騒がしい子だったり、「太」という名前なのにひょろひょろだったり。しかしそれはそれで「特徴」としてとらえよう。「太」なのに細かったら、むしろ「オイシイ」名前だ。大切なのは、その人の映像に漢字のイメージを付加し、自分の中にインパクトを残して焼きつけることなのだ。
目立つ特徴、目立たない特徴
イメージングスキルは誰にでもあるもの
スクリーン法を使ったイメージングは記憶力の強化において超重要と言える、絶対に欠かせないコツだ。「自分にはイメージ力がない」と思っている人も嘆かないでほしい。「自分の持ち物で、大切なものを3つあげてください」と言われたら考えることができるはずだ。頭の中にはものがいくつも浮かぶはずだ。それで十分なのだ。問われているのは、無から何かを生み出す発想力ではなく、知っているものや知識をからめる想像力・連想力なのだ。
光をさらに強調するか、陰にスポットをあてるか
アントニオ猪木のアゴは、誰が見てもわかる「目立つ特徴」だ。しかし相武紗季の「紗」は、意識しなければスルーしてしまうこともありうる「目立たない特徴」だ。目立つ部分を強調するのは記憶において有効な手段の一つだが、目立たない部分を強調することも、「特徴をとらえる」ということにおいては並んで大切なのだ。
「陰」と「陽」2つのポイントに注目!
いずれにせよ、「大切な部分を強調する」という観点は同じだ。イメージを最大限に活用し、大切なポイントに注意を払い、「あれ、どっちだったっけ?」を防ぐことを意識してインプットしてほしい。光(目立つ特徴)にも陰(目立たない特徴)にも、等しく焦点をあてることが記憶の確実性を高める。
まとめ
特徴をとらえて強調するデフォルメの発想は、記憶の基本テクニックだ。漢字では間違えやすい部分を先読みして強調し、既知の漢字との違いをイメージで焼きつける。熟語では自分なりのイメージを作り、例文と結びつける。人名では名ふだ法で顔と名前を一体化させ、漢字のイメージを相手に重ねる。目立つ特徴も目立たない特徴も、等しく強調することが大切だ。家庭では、子どもが新しい漢字や友達の名前を覚えるとき、一緒に特徴を探して面白いイメージを作る遊びを取り入れよう。間違えそうなポイントを予測する習慣が、確実な記憶を育てる。