難関校に合格する人の勉強法はいつの時代も同じ 第八章 合格を確実にするための味方

第八章では、合格を確実にするための味方として、親のサポート、参考書・問題集、友人、予備校・塾の活用法が詳しく解説されている。受験勉強を成功に導くためには、本人の努力だけでなく、周囲のサポートや適切なツールの活用が欠かせない。特に中学受験や高校受験では、親の正しいサポートが合格への鍵となる。保護者が子どもの学習をサポートする際の具体的な指針となる内容だ。
この章の目次
合格のために必須の親のサポート
参考書や問題集、あるいは予備校や塾など、大学受験で親が子にするサポートの大半は経済的なことである。あとはこれらをうまく使ってどう効率的に勉強を進めるかは本人主導が基本だろう。一方、中学受験、高校受験の場合は、お金だけでなくいろんなサポートが必要になる。いくら受験生とはいえ、彼らはまだ未熟な子どもだ。自分を律するのは難しいし、効率的な勉強を自分で編み出したりとか志望校対策をやったりということもなかなかできないので、親にかかる期待は大きい。
正しい方向でのサポート
ただし、これが裏目に出ることも多いので要注意だ。親のサポートは正しい方向で行われれば志望校合格への強力な武器になるが、一歩まちがえたら毒になる危険もある。とくに中学受験の場合、ここぞとばかりに自分の考えを押し付ける親の態度が受験生たちに与える影響は大きい。誰でもそうだが、勉強を単調作業として長く続けることや実現不可能な無理な要求をされるとテンションは低くなる。受験生の親として頑張りたくなる気持ちはよくわかるが、相手はまだ小学生なので楽しみやご褒美を与えつつ「その気にさせながら勉強させる」ということを忘れてはいけない。
子どもへの影響力
親としてもう一つ注意しなければならないのは、自分がふだんいっていることの子どもへの影響力だ。受験生の親というつらい状態を嫌がる親は多いが、子どもはそれを敏感に察知している。親が「受験なんて中学受験だけで十分だ。付属の中学に入ったらあとは大学までエスカレーターで進学してほしい」などといつも口にしていれば、子どもは自然にそう考えるようになる。これは一種の洗脳だ。中身が正しければ問題ないが、自分が楽になりたいためにまちがった考えを子どもに刷り込んでいることが多いので注意してほしい。
可愛いからこそあえて試練を与える
第一章でも書いたが、人生の目標は「大学に合格すること」ではない。受験はあくまで通過点で、本当の目標は厳しい社会の中で生き抜くことにある。付属の中学に入学して大学までエスカレーターで進学するというのは、決してそのための必要十分条件ではないのだ。社会の中で生き抜く力を磨くべきときに楽ばかりさせていたら、決して子どものためにはならない。この時期に必要なのは、困難な状況を自分の力で乗り切る経験だ。受験はそのための一種の試練である。本当に我が子が可愛いのなら、「だからこそあえて試練を与える」くらいの考えでいたほうがいいだろう。子どもに現実を教えるのが本当の親の愛である。
「参考書・問題集」の活用法
受験勉強において参考書や問題集は強力な武器になる。しかし、それは自分に合っているものを使ったときの話だ。合わないものを使ったところで学力向上には結びつかない。逆に頭がどんどん混乱して、気づいたときには勉強嫌いになっているなんてこともあるので注意しなければいけない。
自分のレベルに合ったものを選ぶ
参考書選びのコツは、「自分のレベルに合ったものを探す」というのがいちばんだ。レベルが合っていれば、解説していることを理解できるから知識としてどんどん吸収できる。問題集の場合も同じで、どんどん解くことでアウトプット力を磨いたり、復習効果で記憶の定着を促すことができる。
また、レベルに合った参考書や問題集を使うことは、勉強のモチベーションの維持にもつながる。受験勉強は長い時間をかけて同じことを繰り返す単純作業なので、じつはこれはかなり大事なポイントだ。勉強を長続きさせるには、無理なく継続的にできる教材を使うのがいちばんなのである。
間違った問題を大切にする
問題集を使う際に重要なのは、間違った問題を大切にすることだ。間違った問題は、自分の弱点を教えてくれる宝物である。間違った問題にチェックをつけて、繰り返し復習することで、確実に得点力が向上する。これは「シメバツチェック法」とも呼ばれる方法で、間違った問題を何度も解き直すことで、弱点を克服し、確実に実力を伸ばすことができる。
参考書選びのコツ
私の場合、参考書や問題集を自分で探したことはほとんどなかった。開成時代にはまわりに情報通がたくさんいたので、「なにかいいのないかな?」と聞くと「こんなのがいいんじゃないか」とすぐに教えてもらえたからである。情報が具体的なので、数ある中から取捨選択するのが楽だし、誰かが体験して効果がわかっているから実際に使ってみるとほとんどハズレはなかった。このように良質な情報が手軽に入るというのも、進学校で学ぶことのメリットである。
有効な情報が得られない場合は自分で選ぶしかないが、これは慎重に行わなければならない。評判のよい参考書や問題集でも、「自分には合わない」ということはよくある。知名度にだまされず、手にとって中身を見たときの印象を大事にするといいだろう。
中学受験用の参考書選び
なお、中学受験用のいろんな参考書や問題集が出ているが、小学生が自分で選択するのはほとんど不可能といっていい。親がサポートするとしても、かなりの知識が必要になる。私は中学受験用の参考書や問題集選びは塾の最も大事な仕事であると考えている。基礎を固めるのが目的ならなんとかなるかもしれないが、志望校対策が目的なら無理をせずに専門家に頼ったほうがいいだろう。
「友人」の活用法
開成から東大という経歴だけを見た人は、私のことを「さぞかし立派な人生を送ってきたにちがいない」と錯覚するかもしれない。しかし実際はかなり浮き沈みが激しかったのは、すでに書いてきたとおりである。「立派」というより、嫌味で「ご立派」といってもらったほうが私には合っているように思う。
友人を大切にする
こんな私でも本当に誰にも誇れる立派なものを持っている。それは友人たちだ。開成時代も東大時代も友人には本当に恵まれていた。受験勉強に励み、狭き門を勝ち抜いて来た優秀な人たちが集まっていたので当然といえば当然だ。
世間では、進学校には「ガリ勉タイプ」が集まっているように思われているが、実際にはこういうタイプはごく少数だ。弾けるときには思い切り弾けるし、バカをやるときには思い切りバカになるというふうに、かなり人間味にあふれている人が多い。それでいて驚くほど勉強ができるのだから、ふつうに考えてもかなり魅力的である。
刺激を勉強のモチベーションにする
こういう人は、一緒にいるだけで本当にいろんな刺激を与えてくれる。この刺激はいい意味でのものだが、それが一人ではなく何人も集まっているから影響力はかなり強くなる。これもまちがいなく進学校に入学することのメリットの一つだ。
受験勉強をするときには、まわりにこういう友人がいるとかなりのプラスになる。いい意味での刺激を受けられることが、勉強のモチベーションになるからである。面白いもので、刺激を受けて頑張って勉強をすると、友人もそれが刺激になってさらに勉強に励むようになる。この上昇スパイラルに乗ることができるとしめたもので、そのまま友人と一緒に志望校の合格を目指せばいい。
進学校ではない場合の刺激の受け方
ただし、進学校ではないけど頑張りたい生徒が、誰から刺激を受けたらいいのかという問題もある。その場合は、塾や予備校の友人、あるいはオンラインの学習コミュニティなど、様々な場所で刺激を受けられる環境を探すことが重要だ。大切なのは、自分よりも少し上のレベルの人と接することで、自然とモチベーションが上がるということである。
悪い刺激に注意する
ただし、このスパイラルは逆の結果を招くこともあるので要注意だ。それは悪い刺激を与える友人の場合、互いに悪影響を与えることでどんどん勉強から離れていくようになる。一人でサボるのは不安だが、共犯者ができると「あいつもサボっているから大丈夫」と気が大きくなるのである。こんなマイナスのスパイラルにはまらないように、受験生のうちは付き合う友人を選んだほうがいいだろう。
よき友人は刺激だけでなく、受験勉強を効果的に進める情報をもたらしてくれることも多い。しかし、一方的に依存しているようだと嫌われてしまうこともあるから、決して「利用しよう」などとは考えず、付き合うなら誠意を持って接するべきである。
「予備校・塾」の活用法
勉強をするのはあくまで本人である。中学生ならまだ許されるかもしれないが、少なくとも高校生なら自分の状態を把握しながらどのような勉強が必要なのかを主体的に考えながらやらなければ、決して成果は上がらない。したがって予備校や塾などは、勉強を進めるために一つのツールにすぎないのである。こういうものをうまく利用して得点力を伸ばすことができるかどうかはすべて本人次第だ。そのことを理解していないと、高いお金を払って予備校や塾に通うことが無駄になってしまいかねない。
自分に合ったスタイルの塾を選ぶ
ちなみに、ツールは自分に合ったものを選ぶのが鉄則だ。予備校にせよ塾にせよ、自分に合ったところのほうがあらゆる点でメリットがある。カリキュラムや講師との相性なども大事なポイントなので、利用するならまずは友人や先輩に話を聞くなどして広く情報を集めることが大事だ。その上で体験講習の制度を利用するなどして、実際に試してから決めるといいだろう。
スタイルもカラーも千差万別だ。自分に合ったスタイルの塾がきっとある。個別指導塾と集団指導塾では、それぞれにメリットとデメリットがある。個別指導塾は、一人ひとりに合わせた指導が受けられるが、費用が高くなりがちだ。集団指導塾は、競争心が刺激され、費用も比較的安いが、自分のペースに合わせにくい場合がある。どちらが良いかは、子どもの性格や学習スタイルによって異なる。
自力で勉強するという選択
もしも自分に合った予備校や塾が見つからなければ、妥協をするのではなく自力で勉強するというのも一つの手だ。「戦略」と「強い意志」は必要になるが、それがあれば大学受験用の勉強は自力で案外なんとかなるものである。
中学受験では塾の力を借りる
なお、この考え方は高校受験なら通用させたいところだが、中学受験ではさすがに無理だ。これまでも書いてきたが、自力ないし親のサポートで基礎固めまではできるが、志望校対策まではできない。入試の問題には学校で教わっていないことでも平気で出されるのが中学受験なので、情報を持っている塾の力を借りたほうが圧倒的に合格しやすくなるのが現実だ。
まとめ
第8章では、合格を確実にするための味方として、親のサポート、参考書・問題集、友人、予備校・塾の活用法が詳しく解説されている。受験勉強を成功に導くためには、本人の努力だけでなく、周囲のサポートや適切なツールの活用が欠かせない。特に中学受験や高校受験では、親の正しいサポートが合格への鍵となる。可愛いからこそあえて試練を与えるという考え方、自分のレベルに合った参考書・問題集の選択、友人からの刺激をモチベーションにすること、そして自分に合ったスタイルの塾を選ぶこと。これらはすべて、合格を確実にするために欠かせない要素だ。保護者が子どもの学習をサポートする際の具体的な指針となる内容である。