中学受験を9割成功に導く「母親力」 第4章 短時間で得点力をアップさせる「繁田式勉強法」のコツ

第3章で知識のインプット術を学んだ後、第4章では得点力を高めるための実践的な勉強法に焦点を当てる。記憶の定着には車の両輪のように二つの要素が必要で、インプットだけでは不十分だ。もう一方の輪が「まちがい管理」である。まちがえた問題は自分の弱点を教えてくれる貴重な財産であり、それを徹底的に管理することが成績アップの鍵となる。本章では、シメバツチェック法、チョクチョク法、メモリーサイクル法など、繁田氏が編み出した独自の勉強法が具体的に紹介される。さらに失点の原因を「注意力不足」と「知識力不足」に分類し、それぞれへの対処法を詳述。スケジュール管理のコツ、PDCAサイクルの活用、過去問の正しい使い方まで、短時間で最大の効果を上げるための実践的ノウハウが詰まっている。
この章の目次
まちがいを管理する「母親力」
まちがえた問題は財産です!
前章では、新しく覚えるものごとを頭のなかに仕入れるときのコツと、母親力を発揮してそれをサポートする方法について伝えた。まずは正しく頭にインプットしないことには、きちんと知識として定着させるための権利すら得られないので、この部分で正しいノウハウを発揮して勉強に取り組むことは大変意義深い。しかしながら、権利を得ただけでは定着することにはならない。どんなに素晴らしいフックをつけ、うまいことステイラインに乗せ、中期記憶に放り込んだとしても、1か月もすれば忘れてしまう記憶では受験で結果を出すことは難しいだろう。言うなれば、前章で説明したことは車の両輪のうちの片方。もう一方がないことには記憶は定着せず、せっかく覚えたこともほどなくして忘却の彼方に消し去られてしまう。では両輪のもう一方はいったい何か。それは、「まちがい管理」である。まちがえた問題を徹底的に管理し、それをできるようにすることは、成績アップには欠かせない。
「シメバツチェック法」で、復習は格段にやり易くなる
子どもにひとつ質問をしてみてほしい。「まちがえた問題は、好きか、きらいか」という質問だ。これは「きらい」と答える子どもが圧倒的に多いと思う。問題を解いて正解したらうれしいし、まちがえたら悔しい。当然のことだ。しかし本番はともかく、それ以外のときにはまちがえたらむしろ喜んでほしい。なぜなら、勉強は新しいことを自分の知識として身につけるために行っているからだ。そしてまちがえた問題は、自分の足りない部分を教えてくれる貴重な財産である。目標はあくまで本番。その準備段階で、初めから全問正解できてしまうような簡単な問題ばかり解いていてもレベルアップにはつながらない。「今のうちにまちがえておいてよかった」「自分の弱点が分かってよかった」というように、ポジティブにとらえるべきなのだ。
まちがいレベルが一目瞭然になる方法
せっかく弱点を教えてくれたまちがいは、できるだけ有効活用しよう。つまり、まちがえた問題をしっかり管理するのだ。小学生は得てして管理能力が低いもの。ここは母親力の発揮しどころである。お勧めしたいのは「シメバツチェック法」という、まちがいレベルが一目瞭然になる方法だ。まずは最初にまちがえた問題に「/」をつける。重要なのは、たとえノートに解いたものでも、ノートに○×をつけるだけでなく、まちがえた場合には問題集のほうにも「/」を入れることだ。なぜなら、まちがえた問題は当然復習をする必要があり、そのときに見るのは問題集のほうだからである。復習時(累計で2度目の学習)に正解した場合は、問題に記した「/」の上に「/」を重ねる。すると、「〆」が出来上がり。これで、この問題はクリアだ。このときまたまちがえた場合は、「/」にもうひとつ「/」を並べて、「//」の形にする。この要領で、もし3度目もまちがえたら、また「/」を追加。つまり、苦手な問題は「/」が増え続けていくわけだ。この方法が便利な理由は他にもある。試験直前は、限られた時間のなかで何に手をつければよいのか迷うところだが、シメバツチェックのおかげで優先順位が明確になるのだ。
失点の原因を認識する「母親力」
「うっかりミス」って言うけれど…
テストで高得点を取るための秘訣は、言うまでもなく「失点しない」ことだ。つまり、「失点を限りなく減らすための努力をすること」が、テストで高得点を取るための秘訣と言える。とはいえ、これは言葉でいうのは簡単でも、実際にはなかなか難しい。繁田氏は自分自身の答案も含め、今まで何十万点、何百万点の失点を見てきた。その原因を考えると、大きくふたつに分かれる。第1の原因は、注意力不足による失点である。「うっかりミス」とか「ケアレスミス」と呼ばれる類のもので、本来取れるはずの問題を落とす失点。この失点は実にやっかいなことに、自覚症状なく訪れる。答え合わせをして、あるいは答案が返却されて、初めて「あれっ?」となるのだ。被害の規模もまたピンキリである。「計算ミス」「問題の読みまちがい」などは序の口で、答案に名前を書き忘れる、マークシートで1列ずらすなど、極端な例ではあるがこんなことがあったら終わりだ。しかしながら、注意力不足はわりと軽んじられがちである。「本来ならできていたはずだ」とか、「今回は運が悪かった」とか、失点した事実を直視せず、自分の実力として認めたがらない傾向にある。しかしそれではいつまでたっても「ミス癖」は直らない。
知らないものは解けない
もうひとつの原因は、知識力不足である。知らなければ解けないのは当然だ。ここで言う知識力不足とは、単に知らないということのみでなく、知識を組み合わせて解答を導き出すいわゆる応用力の不足も含む。要は、「その問題を解く力がないからまちがえる」これが知識力不足による失点だ。勉強不足だと実感するのはたいていこちらの失点をした場合である。知識力がなければテストでの高得点が望めないのはもっともなことだろう。注意力と知識力はフィギュアスケートで言えば技術点と構成点みたいなもの。両方が備わって初めて高得点を獲得することができる。
悲しい失点を防ぐ「母親力」
実力以上の力は発揮できる?
まずは「注意力不足」による失点について、その対処法を考えてみよう。この手のミスは、本来失点するはずがない問題を落としているのだから、まったく手も足も出なかった問題での失点以上に悔しい。うっかりミスの多い人は、たまに「実力以上の力が発揮できた」と感じる場面があるのではないだろうか。しかし試験というものは、蓄えた知識以上の問題は解けないものであり、「実力以上の力」というのは、本人の思い込みにすぎない。つまり、「実力以上の力」と感じたのは、ふだんの試験で100%の実力を発揮できていないことの裏返しだ。注意力不足の凡ミスによる失点がよくあるため、たまたまそれがなかったとき、「いつも以上にできた」と錯覚してしまうのである。
見直しのタイミングを「見直す」
人間は誰しもミスをするもの。どんなに優秀な生徒でも、注意力不足のミスをゼロにすることはできないだろう。しかし、心がけ次第で限りなくゼロに近づけることは可能だ。その方法が、繁田氏が命名した「チョクチョク(直直)法」である。問題をひとつ解き終えた「直」後に見「直」すから「チョクチョク」。我ながらよいネーミングだと思うが、これは絶大な効果があるので、「ちょくちょく」凡ミスをしてしまう人ほど実践してほしい。時間に余裕がない場合は別として、試験の際、一度も見直しをしないという人は少ないだろう。しかしここでポイントとなるのは見直しのタイミング。子どもが注意力不足による失点をよくするなら、全問終了後に行う普通の見直しではなく、1問ずつの解答直後の見直し、つまりチョクチョク法を試させてみてほしい。
チョクチョク法が優れている3つの理由
チョクチョク法が優れている理由は3つある。まず「集中力が持続している状態での見直しができる」。第1問を終えた直後に第1問を見直せば、その問題の内容が完全に頭にインプットされており、集中力が途切れていないので、最後にまとめて見直すよりもまちがいが発見しやすいというメリットがある。頭がホットな状態での見直しは、計算ミスや誤字脱字の発見などには大変優れた効果を発揮する。第2は「見直しができなくなるリスクを回避できる」。最後にまとめて見直そうと考えていても、最終的に十分な時間が確保できるとは限らない。まして後半に難問があったりするとなおさらだ。第3は「解いている最中の安心感を得られる」。日頃、凡ミスが多い人ほど、「今回もミスがあるのでは…」と不安を感じながら試験に臨んでいるのではないだろうか。その点、チョクチョク法を実践すれば、「ちゃんと見直したから大丈夫」という安心感を得られるはずだ。とはいえ、試験は時間配分が重要である。チョクチョク法実行の目安としては、解答に要した時間の10分の1程度と覚えておいてほしい。
問題文を読むときは、時間をかけすぎてよい
チョクチョク法では発見しにくいミスとして、前提条件の勘違いなどの思い込みによるミスを挙げた。その代表が問題文の読みまちがいである。繁田氏はミスをするタイミングには、「問題文を読むとき」「問題を解くとき」「解答を記入するとき」の3つがあると考えているが、問題文の読みまちがいによるミスが最もやっかいと言えるだろう。この手のミスは、あとで気づいたときのダメージは計り知れない。問題文の読みまちがいは、問題を解くうえでの大前提が根底から崩れるということだ。それなりの時間を費やした作業がすべて徒労に終わるわけである。時間を気にするあまり問題文を読み流してしまうと、結果的にこうしたミスのリスクが高まる。焦る気持ちをぐっとこらえて、問題文はしっかり読み込むべきだ。繁田氏は問題を解く際、他の人の3倍くらいは時間をかけて問題文を熟読するよう意識していた。問題文をじっくり読むことのメリットは他にもある。問題自体をかみ砕いて理解することで、解答を導き出すまでの作業がスムーズになるのだ。
覚えるまでやらせきる「母親力」
すべての教科は暗記物と考えよう
続いては「知識力不足」への対処法である。知識力不足による失点を克服するためには、当然ながら新しく知識を仕入れなくてはならないわけで、ここでは暗記物を覚えるという観点で話をしたい。暗記物というと、人名・地名などを覚えなければならない社会と、生物・地学分野で覚えることが多い理科の2教科をイメージされるだろうか。一方で、算数や国語は、数式・公式・文法などのメカニズムを学び、そこから思考力を駆使して正解を導き出していく教科といわれることが多い。しかし、繁田氏は算数・国語も暗記物だと思っている。算数・国語を暗記物とする理由は、一つひとつの細かい知識を暗記する社会・理科に対し、算数・国語は解答につながるプロセスを暗記するだけの違いととらえているからだ。繁田氏は小学生時代から、国語が苦手だった。しかし大学受験では、いよいよ苦手の国語の克服を避けては通れず、過去問や実戦問題集を徹底的に勉強した。すると不思議なことに、本番2週間前というギリギリのタイミングになって、模範解答に近い解答を書けるようになった。これは突然変異で国語力がアップしたわけではなく、要は模範解答のパターンを体得したということ。相当数の問題をこなしたことで、模範解答の書き方をある意味「覚えて」しまったのだ。
一冊をカンペキに。浮気は禁止!
参考書・問題集選びのポイントについても話しておこう。ここがずれてしまうと、せっかくの学習効果が半減してしまう。子どもから参考書や問題集を買ってほしいといわれたら、多くの母親は、「好きなだけ買いなさい」とお金を出してあげることと思う。しかし、参考書はたくさんそろえれば学力が伸びるというものではない。書店へ行けば、目移りするほどの参考書が並んでいるが、肝心なのは、冊数を絞って自分のレベルや目的に合致したものを選ぶことだ。参考書は一緒に受験を戦う大切なパートナーだから、相性がよければ勉強のモチベーションが高まるが、逆にしっくりこないと、成績の下降につながりかねない。あれもこれも手に取り乱読した結果、どれも中途半端で放り投げてしまうのは最悪のパターンだ。広く浅くより、狭く深くが基本。「一冊をカンペキに」という意識で取り組むことが大切である。中学受験の場合は、子どもがひとりで参考書や問題集を選ぶのは無理な話。母親が一緒に書店へ行くなり、インターネットなどで情報を得るなりし、相談しながら使いやすいものを選んであげてほしい。
正しい復習法を教える「母親力」
最大の効果を発揮する復習のタイミングとは?
新たに知識を仕入れるときにステイラインの意識が大切だということはすでに述べたとおりだが、他にも重要なことがある。それはポイントを押さえた「復習」を意識することだ。人間は忘れる生き物だから、一度学んだものも、しばらく放置すれば頭から消えてしまう。だからこそ復習が必要になるわけだが、この復習には、記憶のメカニズムに沿った効果的なタイミングが存在する。まず復習の目的から確認しておく。復習の目的は、頭にインプットした知識に再度アクセスすることで、知識をより強固な形に進化させることだ。ということは、時間が経過しすぎて頭から抜けてしまった後に復習しても、それはもはや「初習」と同じ状態となり復習本来の価値を持たなくなる。逆に覚えすぎているタイミングでの復習も効果的ではない。分かりきったことを復習しても、復習の目的である「知識の進化」「記憶の強化」は達成できないのだ。つまり復習は「覚えすぎておらず、しかし忘れきってもいない」、そんなタイミングで行うのが理想的ということになる。そのためのコツは「間隔を広げながら復習すること」で、この方法を「メモリーサイクル法」と呼んでいる。
たたみかけるようにやり直す「短期メモリーサイクル法」
まずは「短期メモリーサイクル法」だ。学びたての知識は、仮に中期記憶に入ったとしても、脳内でのキープ力がとても弱く、多くをあっという間に、それこそ数分~1時間以内に忘れる。だからなるべく忘れにくくするためにインプット時にフックをつけたり面白おかしく覚えたりと工夫をするわけだが、それだけでは足りない。学んでから数分~数十分の早いタイミングで、知識の確認作業を行う必要があるのだ。この確認作業に繁田氏は「チェックペン」を活用し、キーワードを伏せた状態で思い出すようにしていた。知識をアウトプットすることが、実はインプットの強化につながるからである。教科書を眺めているだけで覚えようとする生徒をよく見かけるが、これは大きなまちがいで、こんなやり方ではとても覚えられない。ポイントとなる単語やフレーズを何らかの方法で伏せて、それをソラで思い出す作業が必要だ。さて一度確認作業を行うと、その効果で記憶が強化される。言いかえると、忘れにくくなる。そこで今度はもう少し間をあけてからまちがえた問題を中心に再度確認するのがポイントだ。
「長期メモリーサイクル法」のポイントは1日後と6日後
短期メモリーサイクル法によりいったん知識を頭に入れたなら、今度は日にち単位で復習して知識を育てていく「長期メモリーサイクル法」の出番である。ポイントは、短期メモリーサイクル法と同様に間隔を広げながら復習するということ、そしてそのタイミング以外ではあえて復習を入れないということだ。短期メモリーサイクル法を駆使して、ある程度安定した中期記憶に持っていったとしても、インプットしたばかりの知識はなんだかんだいってまだもろい。そこでまずは早めのタイミング、具体的には1日後に一度復習を入れる。この復習は、インプット時の短期メモリーサイクル法でまちがえた問題を中心に行う。次の復習はその翌日にやっても効果的ではない。一度復習を入れて強化された記憶は、少し寝かせてからお手入れしてあげたほうが、復習回数を減らせるうえに復習効果を高められるという点で有意義だ。だからあえて日にちをあけて約1週間後、そしてその次はさらに日にちをあけて約1か月後に復習するのが理想的なタイミングになる。タイミングを計ったこの復習こそが、無駄なく確実に知識を長期記憶まで育て上げ、定着させるためのコツなのだ。
スケジュールを管理する「母親力」
スケジュールの基本は「1週間の繰り返し」
効率的な復習法であるメモリーサイクル法は、1日後と、約1週間後に復習を行うのが基本だ(仮に難しい場合は、2日後、5日後といった形で、なるべくすぐにやる→少し間隔をあけてやる、という形さえ意識すれば多少アレンジしてもOK)。そのために、1週間の勉強計画を立てることが大切となる。小学生のスケジュールは、たいていの場合には学校や塾の時間が決まっているので、それ以外の時間帯に塾の宿題の時間や習い事の時間を割り振ることで1週間の「基本スケジュール」を組み立て、それを毎週繰り返すのが基本となる。子どもが自分自身でスケジュールを立てたり、進み具合を管理したりするのは難しいので、このスケジュール立案や立てたスケジュールに基づく進捗管理は、母親力の発揮しどころである。
効果的なスケジュールの組み方
スケジュールの作成方法の一例を紹介する。まずは月曜日~日曜日まで、24時間のタイムラインが書かれた1週間のカレンダーを用意する。これは手書きで作成しても、エクセル等を使用して作成しても構わない。そしてここに、まずは学校や塾、習い事といった、固定された予定を書き込む。通学や通塾に時間がかかる場合には、それも含めて記入する。次に起床時刻と就寝時刻を書き込む。学校や塾の予定を先に記入する理由は、学校や塾の時間帯を見て、家庭学習にあてる時間帯をある程度想像してから「何時に寝るか」「何時に起きるか」を決めるためだ。それから、食事の時間を書き込む。そしたらいよいよ、家庭学習をやるべき時間帯をブロックし、そこに具体的な教科名・教材名・ページ数を書き込む。これは長期メモリーサイクル法に従って書こう。たとえば算数の授業が水曜日にあるなら、まずはその1日後の木曜日に宿題を終わらせるようにする。次に、授業から6日後(宿題をやった日からは5日後)にあたる翌週の火曜日に、宿題でまちがえた問題(シメバツチェックをしておく)を中心にやり直すという計画を立てる。
計画を修正する「母親力」
子どもと一緒に取り組む「PDCAサイクル」
ひとたびスケジュールを決めればやるべきことがグッと明確になるが、状況に応じて計画を立て直すことは重要だ。勉強とは航海のようなもので、風や波の影響を知らず知らずのうちに受けるもの。ここで言う「風や波」とは、「誘惑に負けてサボってしまった時間」や、「予想以上に時間のかかった問題」のことだ。これらのせいで多くの場合、計画の見直しを余儀なくされる。ではどのように計画を立て直したらよいだろうか。これについては1週間でやるべき最低限の内容にかかる時間からの逆算で考えるようにしてほしい。決めたスケジュールで数週間取り組んだ後に振り返れば、「この教科の学習はスムーズだけど、この教科は思っていたよりも時間がかかる」などというように、子どもの勉強の特性についてもこれまでよりはっきりと認識できているはずだ。そういったこともすべて考慮したうえで、特にマイナスに働いた要因に対する改善策をしっかりと考えつつ、改めて現状を分析し、計画を立て直そう。
可視化することのメリット
このような一連の流れは仕事でも使われる方法論で、「PDCAサイクル」と呼ばれている。P・D・C・Aは、それぞれ次の英単語の頭文字だ。P Plan:計画、D Do:実行、C Check:評価・チェック、A
Action:振り返り・改善。最後のActionまでたどり着いたら再度Planに戻ってらせん状にこのプロセスを回していくので、PDCA「サイクル」と名づけられている。スケジュールを立て、実行し、進み具合をチェックしつつ、一定期間が経過したら振り返って改善策を考える。そしてそれをもとにスケジュールを修正する。勉強を効率的に進めるためには、実に大切なことだ。可視化した状態で1日の行動を検証してみると、予定と予定の間にも、なんとなく過ごしたムダな時間が浮かび上がってくるはずだ。そんな「ダラダラタイム」が意外とたくさんあることに気づいたら、今度はムダな時間を作らないよう意識しながら行動するようアドバイスしてほしい。こんな感じでしっかり可視化して、毎日「ここまでやったら終わり!」という目標ラインをきっちり決めておくことが大切である。
過去問に振り回されない「母親力」
過去問は「出題傾向」と「距離」を知るための道具
過去問の活用方法についても話しておく。6年生のある時期を迎えれば、受験生たちは過去問と向き合う必要が出てくる。一般的には夏期講習明けからといわれるが、必ずしもそうである必要はない。過去問はその扱い方をまちがえると、かけた労力のわりに成果が出ないこともあるので注意が必要だ。よく「過去問は何度もやり直したほうがよい(何周もしたほうがよい)」といわれるが、闇雲に繰り返すのはお勧めできない。大前提として忘れてならないのは、過去問はあくまでその学校の「出題傾向」、そして今の自分との「距離」を知るための道具にすぎないということだ。そういう意味で、まず一度過去問に目を通す、あるいは直近の年度からさかのぼって3年分くらいやっておくのはよいことだ。ただし、もしそこでひどい点数を取ってしまった場合にはどうするべきか。その場合次にやるべきことは、弱点分析と、その弱点を克服するための対策である。
過去問はあくまで過去問。冷静に活用して弱点対策を
過去問はあくまで過去の問題であり、同じ問題が出ることは基本的にない。ということは、似たような形式の出題、あるいは似たような思考回路を使う問題が出題されたときに、しっかり対応できる力を身につけることこそが重要だ。焦って闇雲に5年、10年、さらにそれを2周、3周とやるくらいなら、まずは「3年分・1回ずつ」でよいのでやってみて、そこで気づいた自分の弱点と向き合い、傾向に合わせた対策を打つことが重要だと心得てほしい。過去問の時期になって必要以上に焦る母親は毎年いるので、まずはこのことを強調しておく。弱点対策の立て方はさまざまだが、基本は一段階戻ることだ。たとえば速さの応用問題が分からないのなら、5年の内容に戻って基礎を固め直すといったことも大切である。一方で、過去問を解き進めたほうがよいケースもある。合格点を取れている場合だ。3年分やってみて安定して合格点を取れているなら、引き続き過去問を解き進めてほしい。「1周目→2周目」ではなく、「1周目→分析と対策→2周目」のように、分析と対策を挟んでから2周目に取り組み、そこで高得点を取れたなら、その学校の傾向に順応した力が身についたということができる。そうなれば合格はもうすぐそこ——過去問演習に取り組むにあたっては、ただ闇雲に解かせるのではなく、分析と対策という大切なポイントを見失わないようにして有意義に進められるように工夫するのも母親の大事な務め、母親力なのである。
まとめ
第4章では、知識の定着と得点力向上のための実践的な勉強法が紹介された。インプットだけでは不十分で、もう一方の輪である「まちがい管理」が不可欠だ。シメバツチェック法でまちがいを可視化し、チョクチョク法で注意力不足のミスを防ぎ、メモリーサイクル法で効率的に復習する。失点の原因を「注意力不足」と「知識力不足」に分類し、それぞれに対する具体的な対処法を実践することで、短時間で最大の効果を上げることができる。さらにスケジュール管理とPDCAサイクルを活用することで、計画的かつ柔軟に学習を進められる。過去問は「出題傾向」と「距離」を知るための道具であり、闇雲に繰り返すのではなく、弱点分析と対策を挟みながら戦略的に活用することが重要だ。母親がこれらのプロセスをサポートすることで、子どもは効率的に成績を伸ばし、合格に近づくことができる。