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中学受験を9割成功に導く「母親力」 第3章 子どもの理解力を飛躍的に高める「繁田式記憶術」のコツ

第3章では、具体的な学習サポートの手法に踏み込む。繁田氏が自身の経験から確立した「繁田式記憶術」は、遊びの時間を作り出すために編み出された効率的な勉強法だ。中学受験においては、親が具体的な勉強方法をアドバイスする総合的なサポートが欠かせない。本章の核心は「ステイライン」という概念だ。これは知識を頭のなかに定着させるための理解度ラインを指し、成績が伸び悩む生徒の多くは「分かったつもり」の状態で終わってしまい、このラインに乗せられていない。母親が効果的な「問いかけ」や「覚え方の工夫」をサポートすることで、子どもは正しい理解度の感覚を身につけ、記憶が飛躍的に定着するようになる。イメージとリズムを活用した記憶法、ストーリー記憶法、頭文字法など、実践的なテクニックが満載だ。

この章の目次

伸び悩みの本質に気づく「母親力」

成績はよかった。けれど…

繁田氏の勉強法は、自らが生徒だった頃のやり方をベースに、指導者となってからの経験も反映させ、微修正しながら作り上げたものだ。開成に合格したことが最終的なゴールと思っていたわけではないが、中高時代は、およそ勤勉とは無縁の生活だった。基本的に遊んでばかりで、中3の頃には悪い遊びがエスカレートしギャンブル三昧におちいるダメダメぶり。小学校時代に有名進学塾SAPIXで優等生だった頃の栄光は見る影もない。しかし、ドロップアウトせずにすんだのは、自分なりの効率的な勉強法を確立していたおかげだった。この勉強法は、元はと言えば「遊びの時間を作り出すにはどうしたらいいか」ということを真剣に考えていたら行き着いた方法だ。つまりなるべく少ない労力で結果を出すやり方であり、勉強した時間を無駄なく得点に結びつける方法とも言える。これを駆使して、ついに特別優等賞を獲得。これは学年で数人しかいない「狭き門」のタイトルである。

成績が伸び悩む本質的な理由は、感覚のまちがいにあった!

大学生になり、繁田氏は古巣SAPIXにて塾講師のアルバイトを始める。SAPIXでは成績のあまりよくない子どもたちを指導する機会もたくさんあった。すると彼らの勉強への取り組み方にある違和感を覚えるようになる。経験を積むにつれ、伸び悩んでいる本質的な理由が、だんだんと見えてくるようになった。SAPIXは1クラス20名程度をいっせいに指導する集団形式の塾なので、全員がしっかり理解できるのを待って授業を進めることができない場合がしばしばある。これはSAPIXに限らず集団授業の宿命とも言えるが、繁田氏はこのことが非常にもどかしかった。なぜなら散々遊び狂った中3時代でも、授業中にしっかりと理解しておくことは自分のルールにしており、これが成果の出る勉強法の「核」となることを体感的に知っていたからだ。

「分かったつもり」を見抜く

伸び悩んでいる生徒に限って、その場その場でしっかりと理解することの大切さを「理解」していないことが多い。さらに問題なのが、そもそも自分がしっかりと理解できていないことを「理解」していないということだ。いわゆる「分かったつもりになっている」というやつである。繁田氏は生徒の「分かったつもり状態」を見抜き、授業後の質問教室に呼び出して対応した。「実はこの問題、分かってなかっただろ?」「いや、分かってるよー…たぶん」「じゃあ、どうやって解くのか、ちょっと先生に説明してみて」。予想どおり、途中でつまずく。そこでもう一度、理解度を確認しながらその子のなかで「腑に落ちた」状態になるまで説明すると、パッと霧が晴れたように顔が明るくなる。しっかり理解できたという感覚を本人が「理解」した瞬間だ。これは繁田氏がテスティーを1対1指導の塾としたひとつの原体験でもある。新しい知識を身につけるためには、まず入口の段階で十分な理解をしておくことが欠かせない。しかしこのことを「理解」していない、というよりむしろ十分な理解という感覚自体を誤って認識している生徒があまりに多い。これこそが成績が伸び悩む理由の本質だと感じた。

正しい理解度に導く「母親力」

知識定着のカギを握る「ステイライン」

SAPIXで伸び悩んでいる生徒たちが宿題をやっていなかったかというと、決してそんなことはなかった。また、他塾での成績不振でテスティーにやって来る生徒も、勉強そのものをまったくしないというケースもあるが、意外と「やっているのに伸びない」パターンが多いのも事実だ。勉強の成果は「勉強の質×勉強の量」で決まる。やっても伸びない(勉強の量を増やしても伸びない)場合には、勉強の質に問題がある可能性が高く、これを改善するための工夫をすべきだ。そこで意識してほしいのが、「勉強した内容の理解度」である。何かを学ぶ際、内容をしっかりと咀嚼し、ある程度のレベルまで理解すると、記憶に残りやすくなる。これを繁田氏は「ステイライン」と名づけた。知識を頭のなかにステイさせる(とどまらせる)ための理解度ラインという意味だ。このステイラインの概念は成績アップの肝になる非常に大事なポイントなのだが、感覚的な話であるがゆえに一般的にあまり強調して語られない。

なんとなく…の理解で終わらせていませんか?

記憶のメカニズムについて少し説明すると、何かを覚えようと思ったら、最初のステップとして、新しく学ぶ事柄を、すでに自分のなかにある知識に結びつける作業が必要になる。結びつけるとは、既存の知識を使って新しい事柄を解釈し、自分の頭のなかで「なるほど納得!」という状態に持っていくことだ。これが先に述べた「ステイライン」に「乗った」という状態である。もちろん人間は忘れる生き物だから、それだけで永遠に覚えていられるわけではないが、とりあえずは知識として自分のなかに定着させるための権利を得たことになる。しかしながら成績の伸び悩む生徒は、この大事な入口部分を適当にやってしまいがちだ。すると人間の頭は「よく分からないコト=必要のない知識」と判断し、新しく頭のなかに仕入れた事柄をすぐに捨ててしまう。その結果ふりだしに戻ってしまい、受けた授業も無駄になり、なかなか身につかないという状態を繰り返す。こうならないよう、毎回ステイラインにきちんと乗せる意識を子どもに持たせることは母親にぜひやってほしい重要なサポートで、効率的な記憶には欠かせない。

効果的な「問いかけ」が理解度アップのカギ

ではこのステイライン、子どもたちに意識させるにはどうしたらよいのか。その効果的な手段が「問いかけ」だ。正しく理解できていれば、たとえつたない言葉であったとしても自らの言葉で、考え方の道筋や、意味、理由などを説明できるはずである。逆に言えば、問いかけた際に自分の言葉で説明できない場合は、きちんと知識を使いこなせるレベルには至っていないということを意味している。算数で言うならば「ちょっと問題の表現を変えられると解けない」、社会でいうならば「歴史の人物名は覚えたけど、そもそもどの時代に何をした人か分からない」みたいな状態だ。テスティーでは問いかけを多用することにより、生徒自身が正しいステイラインの感覚を身につけてくれるよう指導している。この感覚はひとたび正しい位置に修正されれば(「分かったつもり」ばかりだった状態から、「ちゃんと分かった」感覚を身につけたなら)、この先ずっと役に立つ一生モノの武器になるので、早いうちに訓練しておくことは非常に意義深い。

覚え方を教える「母親力」

最初の入り口は、なるべく印象的な覚え方で

ステイラインに乗せる目的とは何か。それは知識をしっかり定着させることだ。少し言い方を変えると、後からちゃんと思い出せるようにするということである。知識をなるべくうまい形でステイラインに乗せることができれば、思い出し作業も非常に楽になる。実はこの作業、外部から補助をすることもできる。前の項では問いかけの大切さを伝えたが、これはあくまでステイラインに乗ったかどうかの確認であり、乗せ方そのもの、つまり「覚え方」は本人に依存している。繁田氏は、知識のインプットにあたり、親が本人をヘルプできるポイントはこの覚え方の補助にあると考えている。なるべく本人が覚えやすいような、印象に残りやすいような知識の仕入れ方を、一緒に考えてあげるのだ。

短期記憶・中期記憶・長期記憶

人間の記憶が強化されていく過程を、「短期記憶」「中期記憶」「長期記憶」という3段階にわけて説明する。短期記憶とは、たとえば一時的に電話番号を覚えるときなどに使う記憶で、記憶を保てる時間は短く、せいぜい数十秒といわれている。これはその場限りの記憶なので力技でもOK、そこに意味づけは要らない。次に中期記憶だが、これを数分~1か月程度の記憶と分類するなら、知識をきちんと身につけるにあたってはまずこの中期記憶に持って行く必要があると言える。ステイラインに乗るというのは、中期記憶になることとも言えるのだ。この中期記憶の幅のなかでなるべく上位の安定した中期記憶に持って行くには、何度も繰り返すか、印象的な覚え方をする必要があり、覚え方が印象的であればあるほど繰り返しの回数は少なくてすむ。そしてこれがさらに進化すると長期記憶という数か月~年単位の記憶になる。最終的なゴールはここだが、一発で長期記憶に入れるのは非常に難しいので、まずは印象的な覚え方で上位の中期記憶を目指すことになる。

面白い「イメージ」が記憶のカギ

有効な覚え方について考察してみよう。繁田氏が生徒によく話す例がある。「今日駅から塾にくるまでの間に、たくさんの人とすれ違ったと思うんだけど、その人たちの顔って覚えているかな?」「えー、覚えていません」「そうだよね。人間は意識を向けなければ覚えることのできない生き物だから、まあそれは当然なんだ。ではちょっと想像してみて。もし来る途中の交番に、全身タイツのおまわりさんがいたらどう?」「ははは(笑)そんなのいたら覚えてるに決まってるよ!」。そしてこの話をした生徒に、1か月ほど経ってから「全身タイツのおまわりさん」の話をすると、当然のように覚えており笑ってくれる。この話には大きなヒントが隠されている。まず、普通ではありえないようなイメージをともなう覚え方は、物事を記憶するにあたり非常に有効だということ。さらに「笑い」といった感情の変化が加われば最高だ。こういった面白いイメージつけのヒントは、母親力の発揮しどころ。母親の方が子どもよりも語彙も人生経験も豊富なのだ。

記憶のフック

思い出すための手がかりのことを「記憶のフック」と呼ぶ。フックとは、洋服などをかけておくあのフックだ。覚えたての記憶というものはつかみどころがなくて頭のなかから取り出すのが困難なもの。それを引っ張り出すためのフック(手がかり)を効果的につけることで、記憶は実に鮮明に取り出せるようになる。このフックのつけ方がうまければうまいほど、ステイラインに簡単に乗るようになるし、中期記憶にうまいこと放り込めるとも言える。繁田氏の母が作ってくれた覚え方の例として、小学生時代の友人の母親が茨城県出身だったことから、「はくさいの生産高1位は茨城県」を覚えるために、「○○君のお母さんを想像して はくさいだから、○○君のお母さんが、息をハー…臭い!」という強烈なインパクトで記憶に残したという。多少強引でも構わないので、思い出すための手がかりを何らかの「イメージ」として作り出し、それを子どもと共有するのが大事だ。

覚え方の工夫を促す「母親力」

スケベニンゲン? エロマンガ!!?

効果的な記憶法の基本として、ポイントとなるのは、いかに特徴的な部分を目立たせるかということだ。人間の場合も、一度見ただけで記憶に残る人には、背が高い、太っている、美人、個性的な髪型など、何かしら目立つ特徴がある。それは勉強においても同じである。たとえば世のなかには「スケベニンゲン」という都市や「エロマンガ島」という島がある。思わず笑ってしまう名前で、こんな風にインパクトのある名前であれば、たとえ初めて聞く外国の地名でも記憶に残りやすい。しかし、覚えなければならない対象に、すべてインパクトがあるわけではない。そんなときは自分でどうにか特徴を見つけ出し、言葉で補いつつ、頭のなかでイメージ化する作業を行う必要がある。

特徴に注目して、違いを際立たせる

日本語は同音異義語の多い言語だが、使い分けを誤り、失点してしまうケースも少なくない。たとえば、「タイショウ」と読ませる熟語はたくさんあり、「対照」「対象」「対称」は同音のうえ、いずれも「対」で始まっているので紛らわしい。そこで、それぞれの言葉に自分なりのイメージをつけて区別する。「対照」は「対照的な2人を照らす」として、明るい顔の人と暗い顔の人、2人をスポットライトが【照らしている】イメージ。「対象」は「象が対象の遊具」として、【象が】巨大なボールなどで遊んでいるイメージ。「対称」は「左右対称の自称警察官」として、怪しい左右対称の顔をした【自称】警察官がニヤニヤしているイメージ。このように、違いのある部分、いわばその熟語の特徴に注目したうえで、そこから連想する具体的なイメージをなるべく面白おかしく創出し、そのイメージの世界に熟語を乗せてしまうのがコツだ。

混同しやすいものを区別する工夫

この「特徴に注目する」というやり方は、同音異義語を覚えるときに役立つのはもちろんだが、いつもどちらか分からなくなってまちがえてしまうような言葉を覚えるときにも極めて有効だ。たとえば紫式部の「紫」を、なぜかいつも「柴」と書いてしまうとしよう。そうしたときには違いの部分、つまり「糸」と「木」に注目し、「紫の糸」みたいなキーワードを記憶のフックとしてあらかじめ用意しておくのだ。また、遣隋使と遣唐使について、どちらが先かいつも混乱するとしよう(遣隋使が先)。そんなときにはたとえば「けんずいし」と「けんとうし」の「ず」と「と」に注目して、どちらが五十音順で先に登場するかを考えればよい。はっきりいってこんなのは即興で作った覚え方にすぎない。有名なゴロ合わせなどの覚え方に比べたら正直「ダサい」と思う。でもよい。あくまで自分が思い出すための手がかり、フックなのだから。子どもがなかなか覚えられないで困っている場合は、このあたりのアイデアを、母親がぜひ一緒になって考えてあげてほしい。

クイズを楽しむ「母親力」

ゴロはイメージとリズムに乗せて

記憶のフックをつけるにあたり、まず意識すべき大切なポイントは思い出すための「カギ」となる部分をしっかり目立たせるということだ。「カギ」は「特徴」や「差異」とも言える。意味的な違いや文字の違いに注目して、そこを強調したフックをつける。うまいフックをつけるにあたっては、他にも大事な要素がある。それはイメージやリズムを活用するということだ。イメージといっても、そんなに難しく考えることはない。たとえば、「カイセイ」という言葉から、頭に浮かぶものは何か。受験生なら繁田氏の出身校である「開成」が真っ先に連想されるだろうが、天気がよい日なら「快晴」、あるいは「改正」という熟語が浮かぶ人もいると思う。このイメージを使った記憶のコツを、「スクリーン法」と呼んでいる。何かを覚えようとするとき、まずは映画館のスクリーンに映し出すように、その対象を映像として頭のなかにイメージする。映像化するのが難しければ、漢字やアルファベットの形そのものでも構わない。こじつけでもよいし、漠然としたものでもよいので、とにかく何かを頭のスクリーンに映し出すことだ。

お母さんも、「妖怪ウォッチ」を覚えなくてはいけない!!!

続いてはリズム。私たちは日常のなかで無意識のうちに物事をリズムと結びつけている。有名なCMのフレーズやお笑い芸人のギャグを文字でみたとき、今度は映像に加えて音声も一緒に思い浮かんでくるはずだ。このリズムをゴロ合わせなどで活用するのもインプットのポイントと言える。おなじみの「なんと見事な平城京」(710年、平城京の始まり)や、「鳴くよウグイス平安京」(794年、平安京遷都)などは、実によいリズムに乗っている。日本人にお馴染みの「七五調」のリズムだ。だからこそ覚えやすく、このゴロはみんなに愛用されている。スクリーン法の発想力を高めるトレーニングとして、親子でクイズ形式の遊びをやるのはおすすめだ。小学生時代の繁田氏は実際、母親とよくこのクイズ形式の遊びを通して、社会の勉強をしていた。とはいえ、アニメキャラのネタ、たとえば今なら「妖怪ウォッチ」のネタは子どものほうが詳しいだろう。キャラの名前がうまくゴロにマッチすることもあるだろうから、実は母親が勉強するべきは「妖怪ウォッチ」なのかもしれない。これは半分冗談、半分本気でいっている。親が自分と同じことに興味を示してくれたら子どもにとってはうれしいものだし、ましてやそれが自分の記憶を補助するためだと分かった日には、きっと子どもは感動することだろう。

イメージを膨らませる「母親力」

威力抜群! ストーリー記憶法

イメージを活用したインプットのコツをもう2つほど紹介しよう。たとえば「太陽」「黒板」「カブトムシ」という3つの単語を覚えなくてはいけないとする。このとき、単に力技で覚えるのではなく(これくらいなら力技でもとりあえずは覚えられるが)、あるひと工夫をすることでグッと記憶の保存力が高まる。それが「ストーリー(小話)」を作るということだ。「太陽」と「黒板」、「黒板」と「カブトムシ」をつなげてイメージを作り、こんな具合に覚える。「太陽がキラキラと黒板を照らしている。その黒板の隅っこを見ると、カブトムシが止まっていた」。このように、単語をつなげてお話を作ってしまうのだ。このときに大事なポイントは、イメージを活用することだ。つまり「太陽がキラキラと~」という様子をスクリーン法で頭に思い描きつつインプットする。「キラキラ」のような様子を表す擬態語も、イメージをよりリアルにするためにつけている。この方法を「ストーリー記憶法」と名づけ、商標も取得している。

面白おかしい、あり得ないイメージが効果的

もっとクセのある覚え方をするなら、たとえばこんな方法もアリだ。「太陽がビューンと飛んできて、黒板にジュワっとめり込んだ! そしたら黒板がパターンと倒れ、その下からなんとカブトムシの大群がうじゃうじゃと出現した!」こんな具合だ。最初の例は、実際に有り得るかもしれないシチュエーションだが、後の例は、こんなことあり得るわけがない。でも人間のたくましい想像力、イメージの力を駆使すれば、容易に状況を思い浮かべることができる。そしてあきらかに後の例のほうが衝撃的で面白おかしい。こういう「面白おかしい」「あり得ない」例のほうが、感情が刺激されて強力にインプットされるのだ。これを社会の勉強に役立てるなら、たとえば秋田県と言えばきりたんぽやなまはげが有名だが、それを文字だけで覚えるのではなくて、まずは「秋田」をイメージするため、秋の田んぼをイメージする。背景の山々は赤や黄色に色づいている…。そんな田んぼで、ナマナマしくハゲたおっちゃんが、きりたんぽを両手に持って踊っているとか。そんな強烈なイメージ(フック)を思い浮かべるのだ。

効果絶大な言葉遊び、頭文字法

もうひとつ紹介する。ゴロ合わせの有用性についてはすでに説明したが、「鳴くよウグイス平安京」のようなゴロだと、基本的にひとつのフレーズでひとつしか覚えることができない。今回はもっと便利な、複数の対象を一気に覚えるためのコツ、「頭文字法」を紹介する。ゴロ合わせの一種なのだが、非常に強力な方法だ。「水平リーベ、僕の船。七曲りシップス、クラークか」という化学の有名なゴロがある。周期表を覚えるためのゴロで、これには頭文字法が使われている。「水(H水素)」「平(Heヘリウム)」「リー(Liリチウム)」「ベー(Beベリリウム)」…のような形で、元素記号の頭文字を順に取っていき、ゴロにしている。頭文字が分かるだけでも人間はだいぶ思い出しやすくなるもの。さらにこれは七五調のリズムになっているので非常に覚えやすく、大変有名になった。この頭文字法を使ってどんどんオリジナルのゴロを作ってしまおう。テスティーで実際にあったエピソードとして、日本の輸入相手国でアメリカが1位の品目(大豆、綿花、小麦、果実)を「ダメ子」というゴロで覚えた生徒がいた。「ダ・メ・コ。ダメコ、ダメ子だ そのダメ子が果物を持っている姿を想像してみよう」。すると、彼女の表情がパッと明るくなり、ダメ子&果物を紙に絵で書き始めた。これこそが頭文字法&スクリーン法の極意なのだ。

集中力を育てる「母親力」

集中力はイメージ力と密接に関係している

この章の最後に、集中力を高めるための方法についても紹介しておく。繁田氏が提唱する覚え方は、お察しのとおりイメージ力が豊かであればあるほど効果を発揮する。そのイメージ力を高めるうえで大切なのが集中力だ。そもそも集中力がなければ、勉強もスポーツも遊びも、何をやっても満足な結果を残せるはずがない。「子どもがなかなか勉強に集中してくれなくて…」という悩みを抱えている母親は少なくないだろう。たとえば、同じ3時間机に向かったとしても、最高の集中力で勉強した場合と、心ここにあらずという感じで一応は勉強したという場合では、成果に大きな差が生じるのは言うまでもない。

集中するために必要な4つの要素

コントロールが難しい集中力だが、繁田氏は集中するために必要な要素は、以下の4つだと考えている。「興味」「時間」「環境」「競争」。さすがに大人にもなれば、集中力を高めるスイッチの入れ方を分かっているだろうが、遊びたい盛りの小学生となると、なかなか自分だけで集中力を高めるのは容易ではない。しかし、この4つの要素があれば、ふだんは集中してくれない小学生も豹変する。「興味」があるゲームならば、「もうやめなさい」と注意されるまで夢中になっている。目標「時間」を設定してあげると、時間内に終わらせようと頑張る。集中するための「環境」に入れば、やらざるを得ない。切磋琢磨するライバルがいて「競争」すれば、相手に負けたくないと奮起する。「興味」について言えば、こんな面白い話がある。小学生に大人気の「妖怪ウォッチ」だが、登場するキャラクターは実に400種類以上。妖怪ウォッチマニアの子どもたちはこの400以上ものキャラクターの名前をすべて覚えていたりする。しかも、それぞれの特徴まで。妖怪ウォッチをスラスラ言える子どもは、勉強ができる子——とは限らない。学校の成績はビリという子もいる。親としては、「その暗記力を勉強に活かしてくれれば…」と思うかもしれないが、要は興味の問題。人間は、興味のあることには夢中になり、知らず知らずのうちに何度も復習するので、興味の対象を妖怪ウォッチのキャラクターではなく勉強に振り向けてあげさえすればよい話なのだ。

集中を鍛える効果的なトレーニング

簡単にできる「時間」「環境」を使ったトレーニングを紹介する。「時間短縮法」は、一定の物事をやる時間を、少しずつ短縮していく方法。問題集などで、同じ難易度の問題を少しずつ時間短縮できるよう取り組む、非常にオーソドックスなトレーニングだが、勉強の効率化に大きなメリットがある。「百マス計算」などが好例だ。「区間増量法」は、一定の時間内に、達成できる分量を増やしていく方法。クイズ番組などで、「青いものを1分間でできるだけ答えなさい」みたいな問題がありますが、これがよい例である。「異空間法」は、ふだん体験することがない、非日常の環境に身を置く方法。通常は、集中しなければならない決まった場所(塾、学校など)に行くと集中力が高まるのだが、どうもマンネリになってしまい、いまいち集中できていないというような場合、キッチンや図書館など、環境を変えてみると効果がある。この4つの要素が集中力を高めるキーワードであることは、今、小学生を指導している経験からもまちがいないと思う。

まとめ

第3章では、繁田氏が確立した「繁田式記憶術」の具体的なテクニックが紹介された。核心となるのは「ステイライン」という概念で、知識を頭のなかに定着させるための理解度ラインを指す。成績が伸び悩む生徒の多くは「分かったつもり」の状態で終わってしまい、このラインに乗せられていない。母親は効果的な「問いかけ」で理解度を確認し、「覚え方の工夫」をサポートすることで、子どもの記憶を飛躍的に向上させることができる。イメージとリズムを活用したスクリーン法、ストーリー記憶法、頭文字法など、実践的なテクニックはすべて、母親が子どもと一緒に楽しみながら取り組めるものだ。さらに集中力を高める4つの要素(興味・時間・環境・競争)を活用することで、学習効果は最大化される。母親の豊富な経験と語彙を活かし、子どもと一緒に記憶のフックを作る過程そのものが、親子のコミュニケーションを深め、子どもの学習意欲を高める。

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