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中学受験を9割成功に導く「母親力」 第1章 正しい「母親力」を発揮するための心構えとは

中学受験において、親の関わり方は合否を左右する重要な要素である。特に母親は子どもと過ごす時間が長く、日々の学習サポートや精神的な支えとして大きな役割を担う。しかし、その関わり方を誤れば、かえって子どもの可能性を狭めてしまうリスクもある。本章では、開成番長として知られる繁田氏が、これまで多くの受験家庭を見てきた経験から、正しい「母親力」を発揮するための心構えを7つの視点から解説している。過干渉の弊害、比較の危険性、適度な放任主義、受験の目的、父親の役割、精神状態の維持、そして不合格時の心のケアまで、保護者が知っておくべき本質的な考え方が詰まっている。

この章の目次

「無関心」以上に問題な「過干渉」

中学受験における家庭教育の重要性

教育こそが親が子どもに残せる最大の財産である。お金は盗まれればなくなるが、教育で培われた学力と人間力は誰にも奪えない。特に小学生のうちは家族と過ごす時間が長く、家庭教育が非常に重要な役割を果たす。中学受験は親子の二人三脚でなければ乗り越えられないものだが、ここで注意すべきは「母親力」が「圧力」になってしまうリスクである。子どものために何かしてあげたいという気持ちは当然だが、その気持ちにブレーキをかけないと、過干渉となってかえって子どものやる気をそいでしまう。

子どものことを思うあまりの悲劇

情報があふれる現代、ネットやママ友からの情報が次々と入って焦りを誘う。勉強時間や内容について細かく指図したり、必要以上にテキストや参考書を与えたり、子どものキャパシティを超えて塾の負担を強いてしまうといった過干渉は要注意だ。実際、週6日間大手集団塾に通いながら、残りの1日に個別指導を4コマ(6時間)も詰め込んだ生徒のケースでは、インプットばかりでアウトプットの時間が取れず、小4から3年間通ったにもかかわらず志望校に不合格となった。また、習い事も本人が望んでいないものだと効果が上がらず、成果が出ないことでさらにプレッシャーをかける悪循環に陥りやすい。

最悪の場合、離婚に至ることもある

中学受験をめぐって夫婦間で意見が食い違い、離婚に至るケースも実際に存在する。子どもの受験が原因で両親がケンカをしていると子どもが感じたら、勉強のみならず、あらゆる面で悪影響は避けられない。子どもの成功を願うあまり転塾を繰り返し、お金も使っていたあるケースでは、おそらく教育方針を巡る考え方の違いをきっかけに、価値観の相違が鮮明になり、離婚という最悪の事態を招いた。子どもは親のオモチャではない。よき伴走者となるためには、親としての思いがまちがった方向へ進まないように、子どもの様子をよく観察し、自分自身も成長していく気持ちが必要である。

子どもを誰かと比べるのはNG

「負けないように頑張りなさい」っていわれて、うれしいですか?

小学生とはいえ、ひとつの人格を持った存在であり、プライドというものがある。「○○ちゃんは学年でトップだってね。あなたも負けないように頑張りなさい」と叱咤激励のつもりでいっても、子どもの立場になれば、自分の尊厳を傷つけられたような気持ちになるはずだ。自分自身が子どもの頃、両親や先生に友達と比べられ、嫌な思いをした経験はないだろうか。大人になると忘れてしまう人が少なくないが、わが子と接する際は、ぜひ自分が子どもだった頃の記憶にアクセスしてほしい。どんなことをいわれたら嫌だったか、反対にどんなことをいわれたらうれしかったか。時代は違っても、嫌なこと、うれしいことは変わらないものだ。

比較対象が身近なほど、ショックは大きい

誰かと比べるという行為は、その比較対象が身近な存在であるほど、子どものショックは大きくなる。仲のよい子や兄弟姉妹と比較されると、リアルであるため平常心では聞き流せない。ナイーブな子であればコンプレックスを植えつけ、親子関係をも破壊しかねず、そうなっては悔やんでも悔やみ切れない。受験において親子間の信頼関係は絶対条件であり、その時点で受験は終わる。母親が自身の勉強や受験体験を語ること自体は悪くないが、特に優秀だった親の場合、それが自慢話にならないよう注意が必要だ。得手不得手は親子でも違う。今はできなくても、そのうちできるようになることも少なくない。まず、いまわが子は精一杯やっているということを認め、苦手克服に力を貸してあげるのが「母親力」である。

「草食男子」は、あの学校にも増殖していた!

なぜわが子を他の子や兄弟姉妹と比べるかと言えば、「なにくそ!」という反発心や競争心を煽りたいとの思惑もあるだろう。反発心や競争心の効果は否定しないが、最近の小学生は、昔の子どもに比べ、よく言えばおとなしく素直、悪く言えばハングリー精神が欠如したタイプが多い。競争心を煽るつもりの親や教師の言動で萎縮して、逆に競争からおりてしまう(やる気をなくす、志望を下げるなど)こともある。伝統的にバンカラ気質がある開成にしても、最近はおとなしい子が増えているそうだ。よくも悪くも時代は変化するもので、そういう意味ではなおさら、過去の自分と比べるのはナンセンスと言えるかもしれない。

「母親力」の理想型は適度な放任主義

母親の余裕は、子どもの笑顔にあらわれる

「子どもに寄り添ってあげること」は重要だが、それは四六時中べったりという意味ではない。常に監視、管理されていると感じたら、誰だって息苦しくなってしまう。理想の「母親力」とは、ある程度の放任主義ができることだ。信頼すべきは信頼して放任し、管理すべきは管理する、こうしたメリハリが必要である。ただ、放任は一歩まちがえれば「無関心」であり、母親に気持ちの余裕と覚悟がなければ、うまく放任と管理のバランスをとることはできない。余裕のある母親の子どもは、プレッシャーをあまり感じずのびのびと勉強できるため、やはり好結果を残している。母親の心境が子に伝わるのだ。母親と子どもはまさに「合わせ鏡」である。

気づけば受験が「自分のため」になっていませんか?

子どもの受験に関わりすぎる母親は、「成績優秀だった」、あるいは「勉強ができず苦労した」、この両極端のタイプが多い。前者は過去の自分と比較しがちで上から目線での威圧的な接し方になりやすく、後者は「自分と同じ苦労はさせたくない」との思いが強すぎるゆえ、冷静に状況を見ることができず、子どもに必要以上の負荷をかけてしまいがち。「自分と同じ苦労はさせたくない」と思うのは当り前の親心だが、受験の目的が自分のコンプレックスを克服することになっては、誰のための受験なのか分からなくなる。また、自分のステータスのために子どもを頑張らせているように見えるケースもある。そもそも、なぜ中学受験をするのか。それは子どもを幸せにしたいという気持ちが原点だったはずだ。

受験の目的を一緒に考える

目的ありきの目標

何のために中学受験をするのかを、しっかり子どもと話し合ったことはあるだろうか。実はこの「何のために」は、何か物事を達成するためには本当に大切なものだ。「目的」という言葉と「目標」という言葉があるが、この2つははっきりと区別して考えなくてはいけない。「目的」というのは「何のために」にあたるもので、その目的を達成するために、手前に「目標」を定めていくのが正しいやり方である。目的という「的(まと)」を射るために、目標という「標(しるべ)」を定めていくというわけだ。目的のないまま目標を定めても、強いエネルギーは生まれない。

目的意識のない、すさんだ大学生活で気づいたこと

繁田氏自身、小3から塾に通い、開成に進学し、大学受験のための塾にも通っていたが、高校になると塾には「籍を置いていた」だけでまったく通わないひどいありさまだった。受験生時代に「何のために受験をするのか」と聞かれても、きっと明確な答えは返ってこなかっただろう。特に大学受験の現役時代は、「周囲がやっているから、なんとなく」その程度の考えしかなかった。だからいつまでたっても本腰が入らず、今日やればよいことを明日に先延ばしにする。結局、浪人した。そして東大に合格したものの、その後超がつくほど落ちこぼれ、ほとんど大学にも行かず、パチスロ屋に入り浸る日々。留年もたくさん経験した。あるときふと、自分自身が情けなくなり、「ただ点数を取るための勉強ではなく、受験勉強を通じてもっと大事なことも教えなくてはならない」と思った。ぼんやりとだが目的が生まれ、塾を立ち上げようと思った瞬間だった。合格という目標の先に目的がなかったから、そんなふうになってしまったのだ。子どもが中学受験をする意味は何か、合格の「目的」は何か。これを家族で今一度考えてみてほしい。

急所で発揮する絶妙な「父親力」

「父親力」は、使いどころをまちがえると…

受験においては、母親だけが孤軍奮闘するのではなく、母親が疲れ気味のときなどには父親が「サポートのサポート」をしてあげるのが理想だ。ただ、父親が深く子どもの受験と関わるのは、なかなか難しいのが現実である。父親の場合、母親に比べて子どもと接する時間が圧倒的に少ないのが一般的だから、仕方がない面もある。積極的に子どもの受験に関わっている割には、残念ながら子どものためになっていないケースも少なくない。たとえば、「受験の常識を知らない」父親。小6からの受験スタートにもかかわらず現実にそぐわない目標設定をされた小学生の男の子がおり、あまりにも厳しい状況だったので、「志望校を変えたほうがいいですよ」と忠告したが、頑として聞き入れてもらえず、結果、中学受験は大失敗。不合格のショックで、メンタルがボロボロになってしまったのだろう。受験までは明るく頑張っていたその子は、そのまま塾に来なくなってしまった。

中学受験を陰で支えてくれた父

もうひとつの典型的な悪いパターンは、「指示だけ」タイプ。要するに、「勉強しなさい」と厳しく言うものの、一緒に問題を解いたり、学習計画の立案に関わったりといった具体的な作業には一切タッチしない父親だ。こういう父親は、子どもにすればウザいだけで、やがては嫌気がさして、勉強しなくなってしまうことが多い。その点、繁田氏は父にうまく支えてもらったという。中学受験のとき、メインで勉強のフォローアップをしてくれたのは母だったが、算数の難問にぶち当たったときなどには父が貴重な休みを使って教えてくれた。当時は塾に「父親教室」なるものがあって、算数の問題の教え方を塾で親に「教える」場があり、父は日曜日にそこに通い、少しでも力になれるよう努力してくれていた。また、父は繁田氏が6年生のときに手術をしたが、実は父の病気がガンだったと知らされたのは、受験が終わってからだった。動揺しないようにと、母と相談して病名を隠すよう配慮してくれたそうだ。

よい精神状態で勉強させる

ヒントを与え、ほめて伸ばす

幼い小学生にとって、「ほめられる」というごほうびはとても重要だ。子どものまちがいに対し、「ダメじゃないの」と否定形から入る母親が少なくないが、それでは子どもは気おくれするばかりである。そうではなく、「どこをまちがえたのか考えてみようか」「問題の最後のほうをもう一度読み直してごらん」というように、ヒントを与えて本人に考えさせることが大事だ。そして、正解したときは、できるだけほめてあげる。高校生ともなれば別だが、小学生のときは基本的にほめられたほうが伸びる可能性が高い。叱るべきところは叱らなくてはいけないが、「2○(ほめる)、1×(叱る、諭す)」、もしくは「3○、1×」くらいのバランスでいることが大事である。

伴走者である母親の覚悟

伴走者である母親には、自分も受験するつもりの覚悟が必要だ。つまり、単にヒントを与えるだけにとどまらず、子どもと一緒に学んでいくという意識である。理科や社会なら、一問一答型のクイズ形式で、遊び感覚を取り入れながら暗記できるように誘導してみてはいかがだろう。ヒントを与える際のポイントは、まず自分ならどういうふうに覚えるだろうかと考えてみることだ。母親のほうが子どもよりもまちがいなく知識が豊富なのだから、覚えやすい方法を提示できるはずである。母親が時間を作り、積極的に勉強に関わることで、子どもは「お母さんは協力者なんだ」との印象を持ってくれるようになる。この連帯感が大切なのだ。

行き詰まったときには思い切ってリセット!

行き詰まったら、ときにはリセットも大切である。「やるべきことは分かっているのに、効率よく進んでくれない」というスランプ状態に陥ることがある。そんなとき、「これではダメだ」と落ち込んでしまうと、ストレスがたまるばかりで、よいことは何もない。ここは思い切って勉強のことは一切忘れ、完全オフの日を作ってあげよう。この日ばかりは、ゲームをしようが、友達と遊びに行こうが、ひたすら寝ていようが、何をしてもOK。行き詰まったときに完全に休むからこそのリフレッシュである。ただし、完全休養日は「1日」と限定するのが鉄則。休養日の翌日、子どもがもしダラダラしていたなら、そのときは母親の出番。必ず「それじゃダメでしょ!」と叱咤してあげてほしい。良好な精神状態を保って勉強するためには、こうしたメリハリが大事なのだ。

一緒になって落ち込まない

成績が下がってしまったら…

成績が下がったときにまず大切なのは、親が一緒に落ち込まないこと。子どもと一緒に親が落ち込むことで、非常に悪いムードになっている家をしばしば見かける。気持ちは分かるが、親は無理にでも明るくふるまうことが大切だ。成績が下がって一番悔しいのは当然本人である。一緒に落ち込む暇があったら、原因と対策を考えて、また前を向いて歩き始める手助けをすることが親、特に一番子どもの身近にいる母親の務めだ。母親だって「行き詰まったらリセット」が大事で、いったん受験から頭を離す。落ち込んでいる姿を子どもに見せるくらいなら、いないほうがよい。成績が下がったとしてもそれはあくまでひとつの試練にすぎない。まずは母親が気持ちを強く保ち、文句を言いたくなるのもぐっとこらえて、子どもになるべく前向きな言葉をかけて励ましてあげよう。

中学受験はあくまで通過点にすぎない

志望校に不合格だった場合、この心のケアをまちがえてしまうと、一生残る深い傷を心に負わせてしまいかねないので注意が必要だ。不合格だった場合は、中学受験はあくまで通過点であるということを、しっかりと伝えてあげよう。結果は確かに不合格かもしれないが、「失敗」では決してない。勉強して身につけた知識や経験は残るし、不合格という結果も「将来のリベンジのチャンス」と前向きにとらえれば、その経験はバネになる。偉人たちも若い頃に苦い経験をしていることが多い。将来の「大成功」は、不合格をどうとらえるか次第だ。そもそも受験では、「合格」すら成功かどうかは分からない。まぐれで上位の学校に入ってしまうと、その後の学校生活が悲惨なことになる場合も多い。中学受験はあくまで通過点であり、その先にある長い人生で、子どもに幸せになってもらうための手段のひとつにすぎない。本末転倒にならないよう、ぜひ正しい心構えで子どもに伴走していただければと思う。

まとめ

中学受験における母親の役割は、あくまで伴走者である。過干渉にならず、他者と比較せず、適度な放任主義でメリハリをつけながら、子どもの精神状態を良好に保つサポートが求められる。受験の目的を親子で共有し、父親も適切に関わりながら、成績の浮き沈みに一喜一憂せず、長期的視点で子どもの成長を見守ることが大切だ。中学受験はあくまで通過点であり、その過程で培われる学力と人間力こそが、子どもの人生における真の財産となる。正しい「母親力」を発揮することで、親子の信頼関係を深め、子どもの可能性を最大限に引き出すことができる。

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