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広尾学園中学校・算数入試対策ガイド(保護者向け)

広尾学園中学校の算数入試対策

広尾学園中学校は、2007年に共学化して以来、首都圏でもトップクラスの人気を誇る難関校です。生徒の大学合格実績や特色あるコース(本科・医進サイエンスなど)の充実もあり、毎年多くの受験生が集まります。当然ながら入試の競争率も高く、合格を勝ち取るには各教科で高得点を狙う必要があります。中でも算数は合否を大きく左右する重要科目であり、得意科目にしておきたい教科です。

算数が得意な受験生が多い広尾学園では、算数で高得点を取れるかどうかが他の受験生との差をつけるポイントになります。広尾学園には一般の「本科」コースと高度な「医進・サイエンス」コースがあり、算数の出題傾向や難易度にはコースごとに違いがあります。しかし、どの受験生にとっても広尾学園の算数で合格点を取るためには計画的な対策と十分な演習が必要不可欠です。本記事では、保護者の方むけに広尾学園中学校の算数入試の特徴と効果的な対策方法を、導入から傾向、重要ポイント別の対策、そして具体的な学習法まで詳しく解説します。

 

1. 出題傾向と難易度

広尾学園中の算数の入試は、例年大問が4~5題程度出題され、試験時間は50分、配点は100点満点です。基本的には大問1で計算問題と小問集合(さまざまな分野の短問)が出題され、残りの大問では分野別の応用問題が出題される構成です。小問集合では四則計算や割合など基礎事項に関する問題と、場合の数や図形など各単元の一行問題が幅広く含まれます。残りの大問は、図形問題、数の性質、規則性や推理問題、場合の数といった分野から出題されることが大半です。

問題全体の難易度構成としては、前半に基本~標準レベルの問題、後半に思考力を要する応用問題が配置される傾向があります。大問1の計算・小問集合や、大問2以降の(1)問目などは解きやすい問題が多く、確実に正解したい部分です。一方で、後半の設問になるにつれて条件が複雑になり、ひと工夫必要な難問も含まれます。ただし非常に奇抜で手が付けられないような超難問ばかりというわけではなく、基本的な知識と解法を押さえていれば対応できる問題が中心です。

近年の傾向として、文章量の多い問題や図や表を伴う問題が増加しています。問題文が長く条件の読み取りに時間を要するような設問や、複数の図形が絡む問題などが出されやすくなっています。このため、単に計算力だけでなく文章を読み解く力(算数的読解力)も鍛えておく必要があります。

本科コースでは計算・小問集合から標準レベルの応用問題がバランスよく出題されますが、医進・サイエンスコースでは最初から応用問題が出され、式や考え方を記述する問題も含まれます。どちらのコースを志望するかによって対策の重点も変わってきます。ただし共通して言えるのは、ミスの少ない計算力と、条件を正確に読み取る力がいずれの問題にも求められるということです。

 

2. 計算力・処理力の重要性

算数の土台となる「計算力」は、広尾学園の入試においても非常に重要です。特に本科コースの入試では、大問1に計算問題や小問集合が配置されており、ここでの失点がそのまま合否を分けることも少なくありません。問題そのものは決して難しくはありませんが、分数や小数の混在した計算、逆算、単位の変換など、日頃の訓練がなければミスを誘発するような内容も含まれます。

計算問題は“確実に得点すべき問題”です。他の受験生も落とさない部分だけに、ここでのケアレスミスは致命傷になりかねません。したがって、日常的に計算練習を行うこと、特にスピードと正確性を意識して演習を積むことが重要です。計算演習では、以下のようなポイントを意識するとよいでしょう。

 ・ミスをしやすい計算パターン(分数×小数、括弧の処理など)を整理して重点的に演習

 ・計算ドリルを用いて1日5~10問を毎日継続する

 ・時間を計って解くことで、本番でのスピード感覚を養う

また、処理力とは「情報を整理し、最短ルートで正答にたどり着く能力」と言い換えることもできます。広尾学園の算数問題では、特に後半の応用問題において、この処理力が試されます。例えば、条件の多い文章題で必要な情報を見抜く力、図形問題で補助線を引いたり、見やすいように図を書き換えたりする力などです。

処理力を育てるためには、計算の正確さに加え、次のような練習が効果的です。

 ・設問の条件を図表にまとめる習慣をつける

 ・途中式を丁寧に書き、どこで間違えたかを見返せる状態にしておく

 ・自分なりの「情報の整理術(図・表・メモ)」を確立する

広尾学園の問題は、特に医進・サイエンスコースでは「答えに至る過程」も評価されることがあります。よって、途中式を丁寧に書く訓練も必要です。正解だけを重視するのではなく、どのような考え方でその答えに至ったかを説明できるようにすることが、今後の学びにもつながる大きな力になります。

最後に時間配分についても触れておきましょう。処理力とは、時間管理能力も含んでいます。入試本番では限られた時間内でどこに時間をかけるか、どの問題を飛ばすかといった判断が求められます。模試や過去問を使って、「計算問題は○分以内」「大問ごとの目安時間」などを意識しながら演習を重ねていくことで、時間感覚と処理速度の両方を鍛えていくことができます。

 

3. 図形問題の対策

広尾学園中学校の算数では、毎年のように図形分野からの出題があります。平面図形・立体図形のいずれも出題されるため、図形が苦手なままでは高得点を狙うのは困難です。特に大問として出題される場合、前半の(1)~(2)は基本知識が問われ、後半になるほど複雑な図形の性質や、図形同士の関係性を把握する力が求められます。

図形問題の特徴として、計算問題のような明確な解法手順がない分、解き方が見つからないまま時間がかかってしまうケースも少なくありません。したがって、図形に対する“直感力”と“論理的把握力”の両立が求められます。

図形問題の対策としてまず必要なのは、基本的な図形の性質・公式の理解と定着です。たとえば、三角形の面積、平行四辺形の性質、円の角度に関する性質(中心角・円周角)、相似・合同の条件などは頻出事項であり、確実にマスターしておく必要があります。さらに、それらをただ覚えるのではなく、なぜその公式や性質が成り立つのかを自分の言葉で説明できるレベルを目指しましょう。

また、広尾学園では図形問題の中に補助線を引くことで解決する問題や、図形の変形や置き換えを利用する応用問題もよく見られます。そのため、過去問や演習問題で「どこに補助線を引けばよいか」「どの図形に分解・変形すれば分かりやすくなるか」を研究し、パターンを蓄積することが大切です。

 ・図形を見て、どの性質が使えそうか瞬時に判断する

 ・与えられた図だけでなく、自分で図を書き換えてみる

 ・図を“操作”する感覚(移動・回転・対称性など)を育てる

立体図形についても頻出です。特に広尾学園では、立体の切断、展開図、投影図に関する問題がよく出題されます。空間把握力が試されるこれらの問題では、実際に手を動かして立方体の展開図を書いてみる、紙を切って組み立ててみるなどの「実感的学習」も非常に効果的です。模型を使った学習や、実物で試してみることは理解の助けになるので、家庭学習に取り入れるのもおすすめです。

また、近年の入試問題には「図が与えられていない」タイプの問題も増えています。このような問題では、自分で正確に図を書く力も必要です。フリーハンドでも見やすい図を素早く描く力は、全ての図形問題に共通して重要なスキルとなります。

総じて、図形問題の攻略には「基本知識+多様な演習」が不可欠です。最初はパターンの多さに圧倒されがちですが、問題を数多くこなすことで、「このタイプはこう解く」といった感覚が身についていきます。広尾学園の過去問に繰り返し取り組み、類題にも幅広く触れることで、図形問題を得点源に変えることができるでしょう。

 

4. 思考力・応用力問題の対策

広尾学園中学校の算数では、毎年必ずと言ってよいほど高い思考力や柔軟な発想力を必要とする問題が出題されます。これらの問題は、単純に公式を覚えていれば解けるという類のものではなく、問題文の条件を読み取り、それを整理・分析しながら解法を自分で組み立てていく必要があります。

たとえば、「規則性」の問題では、与えられた数列や図形の並びに隠れたパターンを見つけ出す観察力が必要です。「場合の数」や「論理的推理」の問題では、条件に当てはまるものを漏れなく数え上げる緻密さと、場合分けや表を用いた論理的な整理力が問われます。また、「複数の条件を満たす数や形を見つけ出す」といった融合的な問題もよく出題され、粘り強く考え抜く力が不可欠です。

こうした問題に対応するには、日々の学習で以下のような力を育てることが大切です。

 ・問題文を正確に読み取り、条件を図や表にまとめる力

 ・式や計算だけでなく、「なぜそうなるか」を説明できる力

 ・途中までわかった情報を使って、さらに先を考える力

特に広尾学園では、設問の構成として「(1)は誘導問題、(2)以降で応用・発展」という流れが多く見られます。したがって、(1)で得た情報をもとに(2)・(3)を考えるという意識を常に持つことが重要です。また、これらの問題は一見すると難しそうに見えますが、手を動かして整理していくことで突破口が見えるケースも多くあります。

思考力問題に取り組む際は、いきなり正解を出そうとせず、「何がわかっていて、何を求めるのか」をノートに書き出す癖をつけると良いでしょう。問題文の条件を正確に整理し、小さなヒントをもとに少しずつ前進していく姿勢が求められます。

また、思考の過程を残すことも重要です。答えが合っているかどうかよりも、どのように考えたか、どこでつまずいたかを見えるようにしておくと、後で見直したときに自分の弱点がはっきりと分かります。広尾学園の入試では答えのみを記述する形式ですが、特に医進・サイエンスコースでは途中の考え方まで問われることもあるため、普段から「説明できる解き方」を意識しましょう。

さらに、こうした問題に慣れるには、多様な問題形式に触れておくことが効果的です。過去問だけでなく、他校の応用問題や、図形×規則性、割合×場合の数といった融合問題にもチャレンジし、応用力の幅を広げていきましょう。

思考力問題は、短期間で急激に伸ばせるものではありません。しかし、毎日少しずつ「考える習慣」を身につけることで、少しずつ解法の引き出しが増え、応用力が養われていきます。焦らずじっくり取り組むことで、広尾学園の難問にも対応できる実力がついていきます。

 

5. 学習法

広尾学園中学校の算数で高得点を取るには、ただ問題をたくさん解けばよいというものではありません。広尾学園の出題傾向を踏まえた上で、基礎→標準→応用と段階的に実力を積み上げていくことが必要です。以下では、学年別・段階別に効果的な学習法を解説します。

1. 基礎力の定着(5年生までに)

5年生のうちに、四則計算、割合、速さ、比、面積、体積などの基本的な単元の理解と定着をしっかり行いましょう。まずは教科書レベルの内容を完璧にし、塾のテキストや市販の問題集で基礎問題を繰り返し解いて、「解き方の型」を体に覚え込ませることが重要です。

2. 標準・応用へのステップアップ(6年生前半)

6年生になると、本格的に志望校対策を始める時期です。基礎がしっかりしていれば、ここからは応用問題に取り組みましょう。特に広尾学園で頻出の図形・規則性・思考系の問題に時間を割くことが大切です。

 ・毎週1回は「広尾学園形式」の問題演習を行う

 ・過去問と類題を組み合わせてパターン学習を行う

 ・苦手単元は集中して短期間で克服し、穴をなくす

3. 実戦演習と時間配分(6年生後半)

9月以降は、本番を意識した演習にシフトします。時間を計って過去問に取り組むことで、「時間内にどこまで解けるか」「どこで時間を使いすぎているか」といった課題を可視化できます。また、実際に模試や過去問を解くことで、精神的な耐性も身につきます。

この時期に意識したいポイント:

 ・1回解いて終わりにせず、必ず解き直しを行う

 ・間違えた問題を「なぜ間違えたか」まで分析し、ノートにまとめる

 ・時間が足りなかった問題は「どこで時間を使いすぎたか」を記録

4. 解き直しノート・復習ノートの活用

苦手な単元や間違えた問題は「解き直しノート」などにまとめておき、定期的に見返すようにしましょう。これは単なる振り返りではなく、自分の弱点の傾向を把握する大きなヒントになります。「なぜ間違えたか」を言語化して書いておくことで、次に同じ間違いを防ぐことができます。

5. 保護者ができるサポート

保護者の方には、勉強の進捗管理や精神的なサポートをお願いしたいところです。スケジュールの調整や学習内容のチェック、時には声かけで励ましたり、間違い直しを一緒に考えたりするだけでも、お子さまのやる気は大きく変わってきます。

 ・問題が解けたときには「すごいね!」としっかり褒める

 ・「どうやって考えたの?」と問いかけ、説明する習慣を育てる

 ・苦手単元が続いているときは、スケジュールや教材の見直しをする

算数は、「正解を出す力」と「そのプロセスを他者に説明する力」の両方を養う科目です。学力の土台である思考力は、ご家庭の中でも育てることができます。ぜひ、日々の学習の中で、親子での会話や工夫を取り入れてみてください。

 

6. まとめ

広尾学園中学校の算数入試は、基礎から応用までバランスよく出題される、非常に完成度の高い問題構成となっています。問題の内容自体は極端に難解なものではありませんが、限られた時間の中で高精度な計算、的確な処理、そして柔軟な発想を発揮することが求められます。

「基本問題で絶対に取りこぼさない力」「複雑な条件でも整理して対応できる力」「多様な分野に対するバランスのよい対応力」——これらを総合的に養うことが、広尾学園の算数において合格点を取るための条件です。

保護者の方にとっても、ただ子どもに勉強を「頑張れ」と言うだけではなく、どのタイミングで何を強化すべきか、お子さまの学習状況を見守り、必要に応じてサポートしていく姿勢が大切です。

毎日の積み重ねを大切にし、「今日は何を理解できたか」「どの問題が難しかったか」といった学習の質を高めていけば、広尾学園のような難関校の算数も確実に突破できるようになります。本番で力を出し切れるよう、親子でじっくり取り組んでいきましょう。

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