公立中高一貫って実際どうなの?メリット・デメリット全解説!
公立中高一貫校のメリット・デメリット
かつて中学受験といえば、私立校の受験を指すことがほとんどでしたが、近年は選択肢の1つとして公立中高一貫校が挙げられるようになりました。公立中高一貫校は、6年間費用を抑えながら質の高い教育が受けられるとして人気です。ですが、お子さまの進学先として検討する際に注意が必要な点もあります。「結局私立にするか公立にするか決められない…」という方も多いと思います。今回は、公立中高一貫校の受検や学校生活において、どのようなメリット・デメリットがあるのかを詳しくご紹介します。
<目次>
公立中高一貫校とは?
公立中高一貫は、 6年間の一環教育により教育の多様化を図ることを目的としています。いわゆる公立中とは何が違うのでしょうか?
公立中高一貫校には大きく2種類がある
公立中高一貫校は大きく分けて「中等教育学校」と「併設型」に分類されます。中等教育学校は中高6年間の一貫教育を提供し、高校での生徒募集はありません。一方、併設型はその名のとおり中学と高校が同じ敷地内や近隣エリアに併設されている学校です。ここでは高校から新たに入学してくる生徒もいます。どちらも試験なしで高校へ進学できるという特徴があります。
ただし、都立中では「併設型」の学校も高校募集を停止しており、6年間の一貫教育を行っています。
入学者選抜方法:公立中高一貫では適性検査を採用!
公立中高一貫校では、教科別の学力試験は基本的に行われません。その代わりに、教科横断型の適性検査と小学校の成績や活動を記録した報告書によって入学者を選抜します。適性検査の出題範囲は小学校で習う範囲に限定されています。ですが、複数教科の資料を読み解いた上で自分の考えを記述する問題など、総合力を問う問題が主体となっています。
公立中高一貫校のメリット
誕生以来、高い人気を誇る公立中高一貫校にはどのようなメリットがあるのでしょうか。今から具体的に見ていきましょう!
公立中高一貫は6年間の中高一貫教育だからのびのびと学べる
公立中高一貫校には高校受験がないため時間的なゆとりが生まれるのがメリットの一つです。のびのびと学校生活を送ることができます。部活動に打ち込んだり、興味のある教科について探求したりでき、自分の好きなことを見つけやすい環境と言えます。
中高一貫だから余裕を持って大学受験に備えられる
もちろんですが、公立中高一貫校には高校受験がありません。ですので、高校進学のタイミングで学習カリキュラムが分断されることがありません。これにより公立中よりも教科書内容の学習が早く終わるため、時間的にも余裕を持って大学受験の勉強に取り組むことができます。多くの中高一貫校で難関大学に多くの合格者を輩出しているのも、このような要因が大きく影響しています。
公立中高一貫では特色あるカリキュラムで学ぶことができる
公立中高一貫には様々な学習プログラムを展開しているところがあります。いくつか例を紹介します。二外国語の履修を通じてグローバル人材の育成をめざす学校や、大学から講師を招いてワークショップを行う学校、多様な実験の授業を通して理系教育に力を入れている学校などがあります。このような特色あるカリキュラムを展開しているのも公立中高一貫校の魅力です。
他にも、都立白鷗高等学校・附属中学校では日本の伝統文化を学ぶ授業があり、都立武蔵高等学校・附属中学校では地球規模の社会問題について考える「地球学」というカリキュラムがユニークな取り組みをしている学校もあります。
公立中高一貫ではクラスメイトとの学力レベルが近い
公立中高一貫校には適性検査を通過してきた学力レベルが近い生徒が集まります。そのため、難度やスピードも自分の学習進度に合っていて、充実した授業を受けられること間違いなしです。また、学力レベルの近い仲間と切磋琢磨しながら勉強できることも大きな利点です。
私立校に比べて公立中高一貫は学費が安い
公立中高一貫校に通った場合でも、中学校までは義務教育なので授業料はかかりません。私立校の中学3年間でかかる学費は公立校の約3倍とも言われています。学費が抑えられるのも公立中高一貫校の大きな魅力の1つと言えるでしょう。
2020年から「私立高校の授業料の実質無償化」が始まったことで家庭の負担は多少軽くなりました。ですが私立校では依然に教材費や施設利用料など、その他の費用が必要となる学校が多いためその差は依然として大きな開きがあるのが実情です。
公立中高一貫校のデメリット
私立校と公立中の良い部分を併せ持ったイメージのある公立中高一貫校。ここまで読むと長所しか無いようにみえますが、デメリットはあるのでしょうか?ここでは、見落としがちな公立中高一貫校の留意点をまとめてご紹介します。
公立中高一貫は倍率が高く、不合格の可能性も高い
公立中高一貫の人気は非常に高いです。その倍率は約5倍、人気校では6~7倍となることも珍しくありません。それに公立中高一貫校は1人1校しか受検することができないため、お子さまにとって厳しい戦いとなる覚悟が必要となります。
公立中高一貫校は数が少ないため志望校の選択肢が限られる
東京都では、都内の私立中学が約180校あるのに対し、公立中高一貫校は11校しかありません(神奈川県は5校、千葉県は3校、埼玉県は4校。2023年現在)。学校の数が少ないため、通学時間などを考慮すると志望校の選択肢が限られるという側面があります。
中だるみの心配があるのも中高一貫ゆえのデメリット
公立中高一貫校では高校受験がないため緊張感が薄れ、中には学習へのモチベーションを維持できない生徒も出てくることがあります。筆者の周りにも中高一貫のせいで6年間勉強しなくて結局受験に失敗してしまった人もいました。せっかくの先取りできるという長所も、勉強しなければ6年間受験がなく緊張感がなくなるという短所に変わってしまいます。
そのため学校によっては、中だるみを防ぐために校外模試を受けさせたり、中学卒業時に卒業論文を課したりするなど、生徒の気を引き締めるための対策を講じているケースもあります。
公立中高一貫は同級生との学力差が見えやすい
公立中高一貫校の授業はレベルが高く、スピードも早いです。なので、怠けてしまうと生徒間で学力に大きな差がついてしまう可能性があります。公立中高一貫校の合格者は自分の学力に自信を持つ生徒が多いです。そのため一度つまずくとモチベーションが保てなくなりズルズルと成績が下がってしまうことも危惧されます。また前項で言った通り、中高一貫だとしっかり先取りして伸びる人と高校受験がないことを言い訳に勉強しない人もいます。
公立中高一貫の受検対策には塾通いが必要
公立中高一貫校の適性検査は、教科を横断した思考力が試される問題が出題されます。また、作文など記述力を求められることが多いです。そのため、学校の授業や家庭学習だけでは対策するのが難しいのが現状です。
公立中高一貫校の受検を決めたら
公立中高一貫校は、私立中学と受験の制度が違います。受検の前に以下の2点を押さえておきましょう。
志望校選びは慎重に
公立中高一貫校には、それぞれ公立ならではの教育方針や校風があります。お子さまの性格や興味・関心を考慮した上で、6年間にわたって充実した生活を送ることのできる学校を選ぶことが大切です。
志望校選びには親の希望だけでなくお子さまの意見を尊重しましょう。そのために親子でしっかりと話し合うようにしましょう。
私立校も公立中高一貫と併願する
もう一度ですが、公立中高一貫校の受検のチャンスは1度しかありません。これはお子さまにとって大きなプレッシャーとなります。
公立中高一貫校に狙いをしぼって学習を進める方も多いと思います。ですが、不合格だった場合を想定して私立校の併願をおすすめします。近年適性検査型入試を採用している私立校が増えています。受検本番を迎える前に私立の合格校を確保しておくことは、お子さまの精神的な余裕にもつながります。